H19.03更新
肛門の痛み

 お尻が痛い、肛門が痛いという経験を、皆さんも一度や二度したことがあると思います。
肛門が痛くなる原因には、裂肛(いわゆる切れ痔)、血栓性外痔核(いぼ痔の一種)、肛門周囲膿瘍(痔瘻)の3つの代表的な病気があり、それぞれについて説明します。

1)裂肛(いわゆる切れ痔)
 裂肛は、太い硬い便が出たとき、何回も下痢したときに、肛門に傷が出来て起こります。多くの方が経験する肛門痛です。痛みの他に、出血を伴うことが多いです。傷は、肛門のすぐ内側に出来、外からは見ることは出来ません。
また、よく出来る場所があり、尾てい骨側とその反対側(陰茎、会陰側)です。たいていの場合、2,3日で症状は治まります。
 ただ、裂肛を何回も繰り返すと、たいへんなことになることがあります。肛門は、そのすぐ内側に内肛門括約筋があります。この筋肉が肛門を閉めるために1番働いています。裂肛を繰り返すと、炎症が内肛門括約筋に波及し、この筋肉がけいれんします。これにより、常に肛門が閉まったような状態になり肛門が狭くなってしまいます。これが、慢性裂肛と言われる状態です。
 こうなると、普通の便を出そうとすると、肛門が狭いため強い肛門痛が出現します。このため、細い便、あるいは下利便を出すしか仕方なくなります。それでも肛門痛はあります。便を出すことが恐怖となり、食事も出来なくなります。
 ここまでくると、手術以外に治療法はありません。手術というと怖いと思われるかもしれませんが、内肛門括約筋の一部を切るという簡単な手術です。入院も2日間で済みます。
 このような状態で悩んでいる方は、肛門を見てもらうのは恥ずかしいと思わず、早く来院して下さい。その後の人生が嘘のように明るくなります。

2)血栓性外痔核(いぼ痔の一種)
 痔核(いわゆるいぼ痔)については、回を改めて詳しくお話しする予定ですが、今回は簡単に説明します。血液の流れが停滞して腫れたのが痔核(いわゆるいぼ痔)です。このため、痔核の中身は、血液が主体です。痔核のうち、肛門の中に出来たのが、内痔核と言います。肛門の外に出来たのが、外痔核です。
 では、血栓性外痔核とは何でしょうか。さきほども述べたように、痔核の主体は血液です。この血液が固まって出来た物が、血栓です。よく、手には血豆が出来ますね。これも血栓です。血栓性外痔核とは、肛門の外に出来た血豆です。
 血栓性外痔核は、肛門に青黒い腫瘤てして見ることが出来ます。(実際には自分の肛門を見るのは難しいですが)症状は、肛門痛です。出血することはありません。また、触ると、痛みが増します。
 治療ですが、このまま様子をみても3〜4日で痛みが引くことが多いです。時には、局所麻酔にて血栓を取り除くことをする場合もあります。また、血栓で出来た腫瘤も1〜2週間で自然に吸収されます。このように言うと、肛門が痛いときはしばらく様子を見た方がいいやと思われる方もおられるかもしれませんが、他の病気で肛門が痛いときには、病気を悪化させる可能性があります。自己診断が確かでない場合には、早めにこう門外科に受診してください。

3)肛門周囲膿瘍(痔瘻)
 まず、肛門内には肛門腺という腺があります。肛門腺の役割ははっきりしていませんが、液を出して、便がスムーズに出るようにしているとも言われています。
 この肛門腺にばい菌が侵入して化膿したのが、肛門周囲膿瘍です。よく出来る場所は、肛門の後ろ側(尾てい骨の方)ですが、肛門の前の方にも出来ます。
 症状は、肛門痛及び発熱です。小さい場合は、発熱しない場合もあります。しかし、肛門痛と発熱があれば、まず、肛門周囲膿瘍を考えなければなりません。
 治療は、原則的に切開し、膿を出すことです。ただし、まだ小さい時には、抗生剤で治まることもあります。いずれにしろ、医療機関での治療が必要になります。また、はずかしいと思い、医療機関に行くのが遅くなると、膿はさらに肛門の奥に広がり重傷化します。なるべく早く医療機関に受診してください。
 切開し、膿を出し一旦治まるものの、再び肛門周囲膿瘍になる人がいます。これを繰り返すと、痔瘻になります。痔瘻は、肛門内の穴と肛門周囲の皮膚に出来た穴が塞がれずに、つながった状態です。このため、常に、膿ないし便が出ている状態になります。このようになったら、手術以外に治療法はありません。また、まれに、痔瘻が癌化することがあります。なるべく早く医療機関に受診してください。

 
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