SummerVacation





「アイオリア!」
ある夏の朝。獅子宮にの声が響く。
「どうした?今日は早いじゃないか。」
アイオリアは少し乱れた寝癖を掻きやって、恋人を招き入れた。
「あのね・・・お願いがあって。」
「ん?何だ?」
はその逞しい腕に抱きついて言った。
「買い物に付き合って欲しいの。」
「買い物・・・?街に出るのか?」
「うん!水着、買おうと思って。」
「水着・・・?」
「アイオリア、今度海に連れてってくれるって言ったでしょう?」
アイオリアは困ったようにうつむいた。
「済まん、・・・今日は星矢のトレーニングに付き合ってやる約束でな・・・。」
「ええ〜!早く買わないと、いいの無くなっちゃうよ!星矢くんの方が優先なんだね!いいよ、じゃあ。」
・・・。」
「水着はアフロディーテに選んでもらおっかな〜!それか、デスマスクに買ってもらおっかな〜!」
アイオリアの眉がぴくりと動いた。
「だっ駄目だ駄目だ!、出掛けよう。(あいつらのことだ。俺のに何をしでかすかわからん!)」
「やった〜!アイオリア、大好きよv」
星矢に心の中で詫びを入れると、アイオリアはジーンズにTシャツという外出着に着替えた。



ギリシャにも、大きなデパートが次々とできている。
「こっ・・・これは!最近の若い女性はこのようなモノを着るのか!これではまるで下着では・・・。」
「いいの。これは見せブラっていってね。見せてもいいブラなんだよ。」
「見せブラ・・・。」
「見せパンもあるんだよ。ホラv」
はローライズのGパンの上からのぞく黒い下着を見せた。
「こっ!これは下着だったのか!!駄目だ!こんな・・・。」
「いいんだってば・・・皆こういうの履いてるんだから、誰も気にしないよ。」
は溜息をついた。
(「こんな調子だと・・・水着なんか選べるかな・・・。」)



「ここが水着売り場だよ、アイオリア!」
「ああ・・・しかし・・・色々なものがあるんだな・・・。」
は嬉しげに、どんどん手にとって体に当て始めた。
「これ・・・ファスナーついてるよ!なんか、峰不二子みたいだね!」
「うーむ・・・しかし下に何か着るのは暑いんじゃないか?」
「何言ってるの?水着なんだから、下は何もナシだよv」
「何!ではこのファスナーが降りてしまったらどうするのだ!駄目だ!」
「もう〜。」
次にが手にとったのは、真っ白なビキニ。
「ねえ、白もいいよね〜。可愛いし。リボンもついてるよv」
「白・・・いかん!濡れたら透けてしまう!」
「そんなことないよ〜。そんなの売ってないって・・・。ちゃんと透けないようになってるんだよ。」
「いや、駄目だ!」
「え〜・・・可愛いのになあ・・・。」



そんなやり取りが散々続いた。アイオリアはが気に入ったものを全て却下してしまう。はだんだん苛立ってきた。
「ねえ・・・アイオリア、私と一緒に海行きたくないの?」
「えっ?!いやそんな・・・。」
「いいよ。どうせ私の水着姿なんか見たくないんでしょ。いい。もう帰ろう。」
「いや、そういうわけでは・・・俺はただ・・・。」
「やっぱりアフロかデスマスクと来ればよかったな。」
はくるりと後ろを向いて歩き出した。
「待ってくれ、!」
アイオリアが追いかけて来たが、は帰り道も一言も口をきかなかった。



数日後。
がそろそろ眠ろうかと思っていた時間、アイオリアが訪ねて来た。
あのショッピングの日以来、ずっと冷戦中だ。
「・・・なあに?」
「こっ・・・この前は、済まなかった。俺は・・・。」
「いいよ。もう。気にしてないから。」
そう言って言葉を遮るの肩をアイオリアは抱き寄せた。
「リア・・・。」
「皆に・・・見せたくないんだ・・・君の肌を。俺のエゴかもしれん。この前が選んでいた水着・・・俺は全て見てみたいと思った。それを着たを。」
「うん・・・。」
は自然に、アイオリアの胸に顔を埋めていた。
「わかった・・・じゃ、皆の前ではTシャツ着てるよ。それならいい?・・・アイオリアの前でだけ、脱ぐよ。」
・・・ごめんな、わがままで。」
「その代わり・・・好きなの選ばせてねv」



「おい。何で水着の上にTシャツ着てんだ!反則じゃねーか!」
「私がプレゼントした薔薇柄の水着・・・着てくれなかったんだね・・・。」
「貴方Tバックを買ってたじゃないですか。そんなもの着るわけないでしょう。」
真夏の太陽の下。
「アイオリア〜!早く、こっち来て!」
砂浜を走るの水着を知っているのは・・・アイオリアだけ。





END
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