いつも二人で (1)
「・・・どうしたんだい?元気がないじゃないか。」
「アフロディーテ様・・・すみません、今朝から気分がすぐれなくて。」
アテナ神殿の前ですれ違ったは、顔がなんだか青白い。そのまま抱きかかえていってやろうとしたが、拒否されてしまった。
「皆が見てますよ。アフロディーテ・・・様。」
は聖域でアテナの秘書兼お話し相手を務める、日本からやって来た女性だった。私は知っている。黄金聖闘士達の大体の連中はこのに思いを寄せているのだ。しかし何故かは私に懐いた。もともと花が好きだったらしいということもあるのだろうが、いつも私の宮にやってきて、一緒に薔薇の世話をしてくれた。
「いっ・・・」
「どうしたの?あ、刺が・・・かわいそう、キレイな指に。」
「あ、いい・・・んですアフロディーテ様・・・。」
傷をつけてしまった彼女の指を、思わず唇で吸ってしまった。気が付いたら、彼女を抱きしめていて。
「こんなことする私は・・・嫌いかい?」
「ううん・・・私はずっと、アフロディーテ・・・様、あなたのことを・・・。」
「、二人のときは、様は無しにして・・・。」
「はい・・・アフロディー・・・テ。」
そうだ。まだ誰も知らないが、私たちは恋人。
双魚宮に戻ってからも、ずっと気になっていた。そろそろが仕事を終えてやって来る時間だ。私はのために、精のつく食事を用意しようと、街にでてアルデバランお勧めの牛肉を買った。
「精をつけたいだと?なんだアフロ、お前恋人でもできたか。はっはっはっは・・・。」
「いや、私が食べたいのではない!」
「まあまあ、せいぜいガンバルのだな。むはははは!」
(「アルデバランめ・・・!」)
「こんにちは、アフロディーテ。」
「ああ!待ってたよ。大丈夫?ちゃんと歩けた?」
「うん・・・アフロに早く会いたかったから。」
その可愛い言葉に、イライラがすっとんでしまう。
「なんだか貧血起こしてるみたいだったから・・・のために、ステーキを用意したんだ。ちゃんと栄養摂った方がいい。」
「あ・・・アフロが作ってくれたの?ちゃんとサラダもワインもあるのね。」
「偶には私が料理するのもいいだろう?」
「あ・・・ありがと・・・・うっ・・・・。」
ど、どうしたんだろう?様子がおかしい。
「うーっ・・・!ごめんアフロ・・・。」
が口元を押さえてキッチンに走る。
「・・・肉は嫌いだったのかな?魚の方が良かったか・・・。」
「ううん、違うの・・・ごめん、ごめんねアフロ。」
私はの背をさすってやった。
「おーいアフロディーテ、いるのかー?」
宮の入り口で星矢の元気な声が聞こえた。
「ホッ、これはこれは・・・どうやら邪魔をしてしまったようじゃ。」
「さんじゃない!どうしたの?気分悪いの?」
どやどやとやってきたのは老師・青銅5人と、紫龍の恋人だという、春麗という娘。
「あーっ、何だよ、美味そうだな!頂いちゃっていい?どこの宮行っても何も出してくれねえんだもんな。腹減っちゃって。」
言うが早いか、星矢は私がの為に用意した料理をペロリと平らげていく。
「星矢、行儀が悪いぞ!」
「いや、いいんだ紫龍・・・。」
「ホッ、よお主はもしや・・・?。アフロディーテ、少々内密の話があるのじゃがの、良いかな?」
「はい・・・では、私のベッドにを休ませます。」
「そうか。では俺が運ぼう。」
氷河がずい、と身を乗り出す。こいつ、クールなふりして油断のならん奴だ。
「いや、君は遠慮する。・・・春麗さんといったかな?君にお願いしたいんだけど、いいかな?」
「あ・・・はい・・・。」
宮の外に出ると、老師は大きな溜息をついた。
「アフロディーテよ。」
「・・・はい?」
「のことじゃがの。」
「彼女が・・・どうかしましたか?」
つき合っていること、わかってしまったか。
「・・・身ごもっておるな。お主の子かの?」
「・・・・・・・・。」
身ごもって・・・ミゴモッテ・・・って・・・。
「な、なんですってー!」
「なんですって、とは何事じゃ!お主、気付いてすらおらぬとは!父親失格じゃな!」
父親・・・パパ?私が?い、いやしかし可能性は十二分にある・・・。
「まあ、そうなった以上、が任務をこなすことは難しくなろう・・・遅かれ早かれアテナに申し上げねばなるまい。」
気付いてやれなかった自分が情けなかった。しかし、純粋に嬉しかった。
「私と・・・の、子供・・・。」
ただ、それは私も相当の攻撃を覚悟しなければなるまい。
「さん、大丈夫ですか?」
「・・・あ、ありがとう春麗さん・・・。」
「さんとアフロディーテ様って、恋人同士だったんですね!お食事も作って下さるなんて、素敵な方。」
「・・・ぐすっ・・・。」
「ど、どうしたのさん、何かあったのですか?」
「春麗さん・・・私、私・・・赤ちゃんができたみたいなの・・・。」
「ええっ!・・・アフロディーテ様の?」
「アフロディーテの、赤ちゃん・・・。」
「それで、もちろんアフロディーテ様は御存知なのでしょうね?」
「いえ・・・知らない・・・。」
「何ですって!そんな!」
「春麗や、そろそろアテナの元へ行かねばの。お待ちかねじゃろう。」
「はい・・・老師様。・・・さん、絶対に生まなきゃダメよ!私でできることがあったら何でもするから。」
「春麗さん・・・。」
「すまなかったね、春麗。」
ジロ・・・
春麗の私を見る目が「サイテー!」と言っていた。
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