医療福祉論
2年前期・課題(2234文字)

 今回の医療福祉論のレポートの課題が「被爆者のケースワーク」について、クライエントが生
活史を語る意義とソーシャルワーカーがクライエントの生活史を聞く意義についてまとめるとい
うことで、テキストを読み自分なりに意見と感想を簡単であるが述べたいと思います。このレポ
ート作成に当たって、原爆や被爆者の学習を、広島と長崎に行き、原爆が広島や長崎に与え
た莫大なる被害などの物理的損害、被爆者の被爆後の悲惨な生活状況・精神的苦痛などなま
なましい残酷な体験談を被爆者本人の口から聞かせていただく機会があり、テキストの冒頭に
ある「原爆は人間に対して何をしたか」「人間は原爆に対して何をすべきか」という問いかけに
さまざまな思いが交差しました。この時は被爆者本人が体験談を私(私たち=学生)に話すこ
とによって原爆の恐ろしさ、残酷さを伝えるということであったが、大学に入り社会福祉的なこと
を学び始めてケースワークという分野から改めてこのことを思い起こしてみると被爆者(クライ
エント)とソーシャルワーカーとのケースワークが見いだす意義が少なからずわかったような気
がします。
 まず、クライエントが生活史を語る意義について私の意見を述べたいと思う。ある人がある経
験をし、そのことによって何らかの問題や生活上の制限を追わざるを得なくなった場合を考え
てみたい。少なからずその問題が進行しているときはなかなかそのことを自分以外の人に話
すということは、ほとんどの場合できないと私は思います。その理由として、自分の抱えている
問題で精一杯で他に目をむける余裕がないということがあげられると思います。また、本人が
そのこと(問題や事柄)を認めるということを分かってはいるが心のどこかで認められないとい
う意識が存在しているということがあげられると考えられる。しかし時が経ち、この混乱期を乗
り越えたとき、この現実を既存の事実として受け止めることが少しづつではあるができるように
なる。つまり、今までのことを現実として認めありのままの自分を素直に見つめることができる
余裕が生まれてくるということである。そしてネガティブだった心の内面をポジティブに変えよう
とする意識が生まれる。過去の自分(出来事)を認めることによって新しい自分を発見すること
ができるということである。これは、あくまでも私の意見ではあるが被爆者についても同じような
ことが言えると思う。
クライエントが自らの生活史(被爆体験)を語る=過去を認めるということであるといえる。それ
までに溜まりにたまった不満をワーカーに話すことにより、悩み・苦痛・ストレスなど今まで自分
がどうしたいのか、何が問題だったのかを自分なりに整理することができる。そしてそのことに
より今の自分に一体何ができるのか=社会的アピールにつながるのだと私は思います。テキ
ストでいうT氏の原爆ドームの絵や本の出版の過王程である。また、冒頭で述べた通り被爆者
本人が学生たちの前で体験を述べ、未来に原爆という事実を伝えていかなくてはならないとい
う一種の使命感にも似た感情(社会的アピール)が生まれてくるのだと思う。クライエントは、い
つか幸せになるため(社会的・精神的)に生きていくんだって、本当は重い扉(被爆体験による
過去の生活)を開きたいんだって、口に出して言うことによって新たな'自分'を見つけ出すという
意味で自分の生活史を語る意義があると私は思います。(ワーカーだけでなく幅広い人に話す
ことも含まれる)
 では、ソーシャルワーカーがクライエントの生活史を聞く意義はどうであろうか。まず、この聞
くという行為についてだが、これはクライエントにとって恐がって踏み出せずにいる一歩を踏み
出させる勇気を与えるということにつながると思う。なかなか言えずにいることに対しゆっくり、
軽くでいいから背中を押してあげることによってクライエントの迷いを和らげ自ら問題点を話す
機会を与えるという意味である。相談される側(ワーカー)にとって何が問題なのか、一体何が
いいたいのかを明確にすることが援助につながる第一歩なので聞くという行為はとても重要な
ことである。そして問題を聞き出すに当たって、人間的な感情によってクライエントとその悲し
みや苦しみを分け合うことにより、お互いの距離を縮めることにつながる。この、話を聞いても
らうという行為により少なからずクライエントはワーカーに信頼関係を築いていくと私は思いま
す。この信頼関係を築くということはソーシャルワークにとってすごく重要なことである。クライエ
ントの言っていることが、単に自分の惨めな生活史を聞いてもらいたいだけなのか、何かアド
バイスを求めているのかをはっきりさせ見抜くことによっても信頼関係は築かれると私は思い
ます。簡単にまとめると、ワーカーがクライエントの生活史を聞くということは、クライエントの内
に秘めた思いを解放してあげることにより、生活問題の整理とともに今後の援助の方針を打ち
出していく重要な機会であるといえる。そしてクライエントの新たな人生の出発を見守る最初の
一歩になるという意義をもっているとおもいます。つまり、本人がいったい何をしたいのか、何
を求めているのかを知るための手助けをするということが大切だということです。本人の社会
的働きかけのきっかけをつくり積極的に課題解決に対する機会を与えるためにも'聞く'という行
為の意義に重要性があると私は思います。

参考文献:テキスト「新 医療福祉論」(大野勇夫著 ミネルヴァ書房)


                    講義内容についてに戻る


戻る
戻る