こころとからだ
1年前期レポート(3367文字)


 近年、若者たちの性・妊娠・性病についての意識が軽く扱われすぎています。十分に性教育
を受けていないためにおきる望まれない妊娠、ちょっとした知識で予防できた性病など、性に
ついてのさまざまな問題が現代の日本にたくさんあふれています。
今回のレポートでは、若者たちのセックス・妊娠についての知識と性病、特にエイズについて調
べ、正しいセックスと性病予防について考えてみたいと思います。
 まず始めに、若者たちのセックス・妊娠について考えていこうと思います。
 「たった一回のセックスでまさか妊娠するとは思わなかった・・・。」
この一言が、現代の若者たちのセックス・妊娠についての考え方、性についての知識不足を象
徴していると思います。
 これは、僕が大学に入って知り合った人の言葉です。彼女は、ちょっとした、いわば現代の若
者文化として、高校生と成り行きからコンドームなしのセックスをしてしまった結果、たった1回
で妊娠してしまったのです。
 ここで考えなくてはならないことは、セックスの相手が高校生だということです。ただセックス
の相手が高校生ということは、珍しいことではないと思いますが、問題は、彼はちゃんと性教育
を受けている学生だったということです。つまり、性教育を受けているにも関わらずコンドーム
をつけるなどの避妊をしなかった、裏を返せば性教育が軽くみすぎられていたということです。
 池上千寿子著の『アダムとイブのやぶにらみ』の中に、日本の性の有効合意は13歳と決めら
れていると書かれている。僕はこの年齢に疑問を感じます。13歳の'こども'に性のメカニズムを
ちゃんと理解しているのか、妊娠・出産についての知識があるのか、十分な性教育をうけてい
るのかという点で問題があると思います。池上氏は「セックスに合意することを有効だと認める
なら、避妊サービスや性感染症の予防・治療のサービスも、本人の意思だけで受けられなけ
ればおかしい。」と、述べている。つまり、この年齢で性の自己決定権を認めるということです。
問題は妊娠の責任をとれない、経済力の伴わない13歳に何ができるかということ、また、これ
らのことに男の子には適応されないということも問題点の一つです。1)
 解決策の一つには、小学校高学年からの本格的な性教育の導入だと僕は思います。早いう
ちからの性教育によって(例えば、男性・女性用コンドームの使い方など)正しいセックスを教
えていかないといけないと思います。
 正しい知識を持ってさえすればたとえ13歳の子供にも性についての責任と判断力が身につく
と思います。
 次に、性病について考えていこうと思います。著作の中の「人間はセックスでうつる病気とは
縁が切れたことがない」、という言葉が象徴するように性感染症(STD:sexually transmitted dis
ease)は「性行為によって感染する病気」である。エイズについていえば、セックスと血液で感染
するといわれ、しかも4H(ホモ・セクシャル、ヘロイン常用者、ハイチ人、ヘモフィリア<血友病
者>)が、危ないといわれていた。エイズはHIV(ヒト免疫不全ウイルス)というウイルスで感染
するSTDのひとつです。1981年、アメリカで初めてエイズが報告され二年後の83年にその原因
がHIVウイルスだとわかりました。つまりHIVがこの時期に、地球上で知らない間にひろがり始
めていたことになります。
 HIV感染を予防するにはコンドームを正しく使用することです。コンドームの使い方には次の
4つのルールがある。2)
@コンドームは勃起したらすぐにつける事。
A根元までつけたことを確認すること。
B射精の後は、すぐに根元をしっかりおさえて抜くこと。
Cはずしたらしばって捨てること。
この4つの条件がHIV感染予防の必須条件であると著者は言っている。
 HIVウイルスは、感染しても自分ではわからない。平均で10年は自覚症状がない。だからこ
そ予防とエイズに対する正確な知識が必要とされます。
 しかし、HIVの感染力をみてみると非常に弱く、多く見積もっても1%(つまり100回に1回)で
ある。HIVの感染は、男性から女性へのほうが感染率が高く、女性から男性へはうつりにくいと
いわれている。男から女へと女から男への感染力の比は2対1ともいわれている。現在、男性
感染者のほうが多いとされているが、西暦2000年(1996年時点)までには世界中のHIV感染者
は4000万人になり、その過半数は女性だとWHOは見積もっている。
 いまアジア・アフリカで、HIV,特に女性のHIV感染、母子感染が広がっている。
北山翔子著の『神様がくれたHIV』で、著者がHIVに感染したのもアフリカであるタンザニアで
ある。『タンザニアでは約30%が感染している』、という言葉が示すようにかなり深刻であること
がわかる。
 著者の北山翔子は、医療ボランティアとして赴任したタンザニアで現地の男性と性交渉をお
こないHIVに感染してしまった。彼女は上記の事実を知りながらセックスをした。つまりエイズ
の知識を持った人でもエイズを現実の問題として認知できていなかったということになる。実
際、現代の日本でもエイズの知識はあるのに援助交際やフリーセックスでHIVに感染して初め
てエイズの恐ろしさを思い知るというケースがあとをたたない。        
 1998年にフジテレビ系で放送され大反響をよんだ『神様もうすこしだけ』というドラマでも、エイ
ズのことを知っていたが援助交際をし、見知らぬ男性とたった1回のセックスでHIVに感染し、
はじめてその恐ろしさを理解する、という設定であった。このドラマでは、ストレス社会から来る
家庭崩壊の結果、援助交際にはしってしまった女子高生のHIV感染者としての苦悩、親友だと
思っていた友達の冷酷な態度、いじめ、家族のもつれ、などエイズの問題をなまなましく描いて
いた。3)、4)
 「キスしても大丈夫とみんなに伝えたい」 昨年7月、アフリカで初めて開催された南アフリカ・
ダーバンの国際エイズ会議で、エイズ対策の必要性を訴えた12歳のヌコシ・ジョンソン君の言
葉である。
「ぼくはエイズに感染しています。抱き合ったり、キスしたり、手を握ったりしても大丈夫、という
ことをみんなに伝えたい。」と、感染者への差別や偏見をなくすよう、か細い声で訴え共感をよ
んだ。
 彼は母親から母子感染したが、母親も97年に死亡。母子感染の確率を抑えるため、エイズ
ウイルスの増殖を抑える治療薬AZTを、感染した母親たちに与えるよう訴えた。2歳のとき、養
母のゲイルさんに引き取られたが、余命9ヶ月と診断されていた。しかし今年12歳の誕生日を
迎え、母子感染で生まれた子供としては、南アフリカでもっとも長く生きたとされている。今年に
入って脳障害で重体に陥り、自宅で安らかな最期をむかえた。  
 彼はエイズとの闘いに苦しむアフリカの象徴だった。マンデラ大統領は「この病気といかに闘
うべきかの手本を示してくれた。」と述べた。5)
 現在、世界規模で広がっているエイズの問題は感染した人たちだけでなく、全人類全体の問
題として捉えなければならない。エイズのことをうわべの知識でしか知らない人が増えている今
の社会で、本当のエイズを理解するには実際に本人が感染することしかないと思う。全世界か
らエイズをなくすためには正しい知識の教育と、一人一人の意識的予防が不可欠だと思う。
 いつの日か、全世界からエイズという病気がなくなり、人々が苦しまないようにするために
は、私たちの世代がどうエイズと向き合っていくかにかかっていると思います。だから私たちは
エイズについて正しい知識を身に付け、エイズの恐ろしさを理解し、次の世代に伝えていかなく
てはならない。


      注:参考文献
            1)アダムとイブのやぶにらみ 池上千寿子 P163〜166
            2)    :             P183・192
            3)神様がくれたHIV 北山翔子
            4)『神様もう少しだけ』フジテレビ 1998 ドラマ
            5)朝日新聞 6月2日


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