キスのキモチ

 

 

 

 

 

「―――ルルーシュ、キスしてもいいかい?」

「は?」

 

「するから、キス―――」

「スザ、ク…?お、おいちょ……ん…ぅ…っ」

(おい!今オレが答える暇はあったか!?)

そう気が付いて心の中で突っ込んだ時には既に遅く、見慣れた顔が焦点が結べない程近くにあった。両手で頬を包まれ、顔を反らす事もできず、腕を突っぱねて押し退けようにも、唇を啄みやがて深く舌を差し込まれて吸われる甘いキスに力が抜けてしまう。

「ふ、はふ…スザ…ク…ん、ふぁ…!」

「…ルルーシュ…」

完全に不意打ちで、そして卑怯だ。しかしその不意打ちで卑怯なそれにルルーシュは逆らえられないし、逃れられない。甘さと激しさの両方を持ったそれは、とろとろとルルーシュの思考を溶かしていく。

(何処で…一体こんなキスを…)

気軽に、キスしてもいいか?と尋ねられる範疇を超えたキスは、とても普段のスザクのイメージにはない。しかしたっぷりと口の中を舌でねぶられ、絡み取られた舌を吸われ、ルルーシュは酸欠とその甘さにくたくただ。

「…はぁ…っ」

ちゅる、と名残り惜しそうに舌の先端を吸って唇が離れる。

口の中がじんじんと熱い。舌が痺れて、唇が怠かった。

「―――ルルーシュ、可愛い…」

「っ」

くたくたのルルーシュがその肩に頭を預けて余韻に喘いでいると、まったく息一つ乱していないスザクは髪や耳に唇を寄せてくる。それがまたくすぐったいのを通り越し、無意識にひくりと喉が震えて反応してしまうような感覚だったので、慌ててルルーシュはスザクの肩から顔を上げた。

すると目の前にある、まるで罪悪感の欠片も感じていないような無邪気な微笑み。

「ルルーシュ?もう大丈夫なのかい?」

「………」

何が大丈夫?だ。無邪気な顔をしてとんだ狸だ。

しかし今喋ると痺れた口ではまともに喋れそうになくて、ルルーシュは罵る代わりに軽くスザクを睨みつける。

「?どうかした、ルルーシュ?」

しかし睨みつけられている事に気付いていないのか、スザクさ小さく小首を傾げ、笑うのである。

(う…っ)

極上のスマイルだ。あまりのまばゆさに思わずルルーシュの頬が赤らむ。

だが次の瞬間はっとして頭を左右に振ってそのほだされた気持ちを振り払った。

(なんてお前は卑怯なんだ…スザク!)

「…お前はズルイな…」

「ん?何が?」

ようやく痺れの取れ始めた口で、まるで恨み言のように思わずつぶやくと、それはしっかりスザクに聞こえていたようだ。

「僕がズルイ?ルルーシュに何かしたっけ」

 きょとん、と小首を傾げる。その様子にルルーシュはわなわなと拳を握り締めた。

「今キスしただろうが!」

「別にそれはズルくないと思うけど………もしかして、嫌だった?」

「!」

いいも悪いも聞く前にキスをしていたじゃないか。

だがそう言おうとして…止める。

(な、何故そんな顔をする…!?)

有無を言わさずにキスをされたのはこちらの方である筈なのに、欲望のままにキスをした本人が―――何故か酷く傷ついたような顔をするのだ。

「ルルーシュは僕とキスするの、嫌だった―――…?」

「え……あ、いや……その」

目に見えてしゅんとするスザクに、ルルーシュはうろたえてしまう。

(な、何だこれはオレが悪いのか!?)

何度も言うが何かを自分がしたのではなく、何をされたのは自分だ。

しかし思いも寄らないスザクの反応に、ルルーシュは慌て、混乱し、そして狼狽した。

「ち、違うスザク!誰もそんな事言ってない!そうじゃなくてだな…っ!」

一体自分は何をやっているのか。何故悲しむスザクを慰めようとしているか。

そもそも何でこんな事になったのか…発端はなんだったのか。

「オレはそういう事を言いたい訳じゃ…」

 そうだ、別にそう言う事がいいた訳じゃない。自分が言いたいのは―――。

(あれ、オレが言いたかったのは……)

「―――じゃあ好きなんだね?」

「?」

何を言いたかったのか忘れかけた時、ふとスザクがまっすぐにルルーシュを見返して問い掛けた。思わずルルーシュの動きが止まる。

「嫌じゃないなら、好きなんだよね?」

「????」

 混乱した頭の中の収拾をつかせようとした所だったので、うまくスザクの言葉の意味が伝わってこない。

「ちゃんと言って、ルルーシュ。ルルーシュは僕とするキスは好き?それとも…やっぱり嫌い?」

「オ、レは…」

膝の上で握りしめていた手をそっと握られ、びくりとする。顔をあげると、スザクがまっすぐ見ていた。

「ルルーシュ」

見詰められ、呼ばれると頬が熱くなってくる。

(何でこんな事になったんだ…?)

あぁもう。混乱した頭にまでそれは回って、ルルーシュから冷静な思考を奪う。

だからだろうか。戦慄く唇が零した言葉は思慮の末だったのか、それとも無意識だったのか…もう覚えてはいなかった。

 

「―――…キスは、すき、だ…」

 

「僕とのキスは嫌いじゃない?」

「嫌いじゃない…―――あぁ、嫌じゃない」

(ああ、どうしてこう、オレはスザクに…)

優しく手の甲を指で撫でられるとさわりと首筋が泡立つ。そんな事で敏感に反応してしまう自分が恥ずかしかった。

「お前とするなら嫌な訳がない…っ…」

全部、スザクがおかしくしたんだ。

妙な事を口走った自覚にただでさえ熱かった顔が更にかーっと火照ってくる。堪らなくなって俯いてしまうが、しかしどうしてもスザクの反応が気になり、ちらりと上目使いにその顔を盗み見てしまう…と。

「!」

近い。思いも寄らない程間近に顔があり、ルルーシュはびくりと体を引く。

(そんな目で見るな)

「ルルーシュ」

(そんな声で呼ぶな…!)

体を引いた分の距離はあっと言う間に詰められた。そうっと耳の裏をくすぐるように指が触れ、頬を包まれて顔を正面に向けさせられる。またキスをされるのだと分かった。しかしそうと分かっても、逃げる気にはならなかった。

「僕もルルーシュとキスするの、好きだよ」

「……そんな事、とっくに知っている…!」

「!」

 何がそんなに嬉しいのか。

満面に喜色を浮かべて再び迫ってくるスザクの顔に、ルルーシュはぶつけるようにキスをした。

 





スザクがおかしな事に…!
でもようやくちゅーできました。次は…