石川建築士事務所

 

車椅子

 


あれはいつの事だっただろうか、もう6,7年も前の事だと思う。

妻が突然福祉の勉強がしたいと言い出した事が発端だ。妻は、車椅子の体験がしたい

と言うので、半田市の福祉会館内にあるデイサービスセンターで車椅子を借り、

名古屋の駅前デパートまで、名鉄電車に乗って行った事を思い出した。

 

私達にとっては、驚きの連続だった。妻が車椅子に座り、ひざ掛けをし、いざ名鉄武豊駅を

出発だ。もちろん私が後押しをする。切符を買いホームへ、すると電車はすぐにホームに

滑り込んで来た。驚いた、ホームと電車との間がかなり空いている、しかも電車の乗車口

のほうが、5cmほど高いのだ。普段はまったく気にもしなかった事が、車椅子の立場で

見たときこれは何だ!と思った。

 

私は、車椅子のグリップを下方に力を入れ、キャスターを持ち上げ乗車した。

しばらくして半田駅を過ぎたころだっただろうか、車掌が私達の方に近づいて来た。

すると車掌はどこの駅で降りますかと訪ねてきた、名古屋駅で降りますと答えると

その場をたち去って行った。妻と顔を見合わせ驚いた、武豊駅の駅員が連絡した

のだろうか私達は、首を傾げた。

 

そうこうしている内にまもなく名古屋に到着のアナウンスが流れた。ドアが開くと

すぐ目の前に駅員が立っているではありませんか。またまた驚きである、車掌が

名古屋駅のステーションに私達が、何両目に乗っているかを連絡したのだろうか。

駅員は私達を改札口の方ではなく、新聞などを搬入するエレベーターまで案内

してくれたのである。そのままエレベータに乗り込むと地下街の通路に出られた

のです。当然切符は、渡づ仕舞いでした。私達は、驚きと感動で涙が滲み出ました。

 

駅から外の歩道に出てビックリ、車椅子が真っ直ぐ動かないのです。歩道は

道路側に勾配が取ってあって、車道の方に吸い寄せられるように下がって行く。

かなりの力で修正しなければ真っ直ぐ進まない。

 

デパートでは、車椅子で入れるトイレは完備されていたので心配はなかった。

私達は、車椅子でデパートの中を移動中なんとなく、他の人の視線が気になる、

なんとなく見つめられている様な気がして、偏見だろうか。環境的なバリアフリーも

さることながら、心のバリアフリーも問題ではないだろうか。

 

私達は、もう疲れたので地下街で食事を取り帰えることにした。帰りの電車も行きと

同じく、車掌や駅員の配慮があった。武豊駅に着くとホームには、駅員が待っていた。

改札口とは別の出口に案内され、ホームの外に出ることが出来た。その出口は、フェンス

状の扉で普段鍵が掛けられいるらしい。長年武豊駅を利用した事があるが、こんな

出口があるなんて今まで知らなかったし、気にも止めてなかった。ひょんな事から貴重な

体験が出来た。かみさんに感謝。

 

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