H22.7更新
血管外科疾患

腹部大動脈瘤:

 大動脈が拡張,瘤化する病気です.破裂しなければ無症状ですが,破裂した場合は救命率が著しく低くなります.治療は開腹して大動脈を人工血管で置き換える手術を行います.当院では手術時自己血回収装置を用いており輸血を行うことはほとんどありません.したがって術後の回復も早くなります.当院で本疾患を治療されるのは80歳以上の超高齢者でさまざまな合併症を有している方がほとんどですが各分野の専門医の協力体制が整っており厳重な術前,術後管理により皆様問題なく回復されます.

閉塞性動脈硬化症:

 動脈硬化が進行すると,動脈が狭窄,閉塞し臓器へ有効な血流量を供給できなくなります.高血圧,糖尿病,高コレステロール血症などの危険因子により動脈硬化は早く進行します.初期は,足の冷感やしびれ,歩くと足が痛くなり(間歇性跛行),進行すると潰瘍,壊疽に陥り切断することになります.初期の場合は薬物治療やリハビリが中心ですが,病院を受診される方はすでに進行しており,常に切断の危機に面している場合が多く当院では積極的に血行再建手術を検討します.血行再建手術には自身の静脈や人工血管を用いたバイパス手術や病変部位をカテーテルで拡張する血管内治療があります.当院では通常のバイパス手術だけでなく,成功率が低いため通常はあまり施行されない足関節付近へのバイパス手術を積極的に施行し,成果をあげております.血管内治療にはバルーン拡張術やステント術があります.カテーテルの先端に風船のように膨らむバルーンがついており,血管がせまくなっている場所を広げるバルーン拡張術(PTA),金属の針金でできた筒(ステント)を血管がせまくなっている場所に留置するステント術があります.体にメスを入れず,レントゲン透視装置を使用し,局所麻酔で針穿刺のみで治療ができるため,体への負担が非常に少ない治療です.通常,カテーテルを使った治療は,病変部が短く,完全閉塞になっていないものがよい適応ですが,当院では難しいとされる血管が完全に閉塞している部位や病変が長めの部位,細い血管の部位にも治療を試みています.治療が成功すれば,症状を改善させることができます.間歇性跛行の症状では,歩行距離が伸び,安静時痛のある症例では,痛みの改善や壊死の危険を回避できます.壊死に至っている症例では,壊死部分を回復させることはできませんが,バイパス手術やカテーテル治療で,血行を改善させることで痛みを軽減し,切断部位をできるだけ少なくするメリットがあります.

急性動脈閉塞:

 血栓が手足の血管を閉塞させ,放置すると壊疽に陥る病気です.急な激痛で発症します.手術で動脈を切開して血栓を取り除きますが,すでに閉塞部位の血管が狭くなっている場合も多く,当院ではカテーテルによる血管拡張術も同時に追加し完全な血行再建に努めています.

下肢静脈瘤:

 体の深いところを流れる静脈に血栓(血のかたまり)を作ってしまう病気です.一般的に足が腫れて痛みを伴います.肉ばなれや筋肉痛と思って放置する方が多いため注意が必要です.この病気で最も怖い点は,血栓が肺に飛んで呼吸困難を来たし急死する肺塞栓症を引き起こすことがあることです.飛行機を降りたときに突然死をおこすことで近年話題になっているエコノミークラス症候群の原因疾患です.
治療は血栓を溶かす薬剤や血液をさらさらにする薬剤を使用します.当院では肺塞栓症を引き起こす可能性が高い場合にはカテーテルを用い血栓を肺に流れる手前でブロックするフィルター(3cm程度の傘のようなもの)留置を即座に施行します.病状が安定したら再びカテーテルで体内よりフィルターを取り除きます.

深部静脈血栓症:

 体の深いところを流れる静脈に血栓(血のかたまり)を作ってしまう病気です.一般的に足が腫れて痛みを伴います.肉ばなれや筋肉痛と思って放置する方が多いため注意が必要です.この病気で最も怖い点は,血栓が肺に飛んで呼吸困難を来たし急死する肺塞栓症を引き起こすことがあることです.飛行機を降りたときに突然死をおこすことで近年話題になっているエコノミークラス症候群の原因疾患です. 治療は血栓を溶かす薬剤や血液をさらさらにする薬剤を使用します.当院では肺塞栓症を引き起こす可能性が高い場合にはカテーテルを用い血栓を肺に流れる手前でブロックするフィルター(3cm程度の傘のようなもの)留置を即座に施行します.病状が安定したら再びカテーテルで体内よりフィルターを取り除きます.

透析用シャント不全:

 人工透析に使用するシャントトラブルに対し手術による再建やカテーテルによる血管内治療,または両者を同時に行うハイブリッド治療を行います.