Tender Rain
気付いたら、降りだしていた。
雨の日は好きだ。
湿気が多いのは嫌だけれど、
雨の、音が好きだ。
それに。
もうすぐ、彼女が来てくれる。
せっかくの休日に、こんな天気。
一番遠いところにある私の宮まで、出向かせるのは悪かったかな?
でも私の身体はまだ癒えていない。激しい闘いを終えて戻ってきて数週。
恥ずかしながら、歩くこともままならない。そんな私の為には毎日この双魚宮まで通ってきてくれる。
栄養たっぷりの食事や、退屈をまぎらわす本。替えの包帯。
そして・・・何より嬉しい・・・彼女その人。
いっそのこと、一緒に暮らしたい。ここで、二人で、薔薇の花に囲まれて。
勇気を出して言ってみようか。
雨の日には、どこにもいかないで、二人、ソファーの上で過ごしたい。
「アフロ・・・こんにちは!」
いつもの可愛らしい声が、今日はちょっと弱々しい。
「ど・・・どうしたの?傘は?」
はずぶ濡れになって入り口に立っていた。
「傘・・・うちにあったの皆貸しちゃってて・・・気付いたら無かったの・・・。」
少し、震えている。
すぐに駆け出して抱き締めてあげたかったが、私の足はまだベッドを動けない。
「おいで・・・。」
仕方なく、ベッドの上から手を差し伸べた。
は、ぽたぽたと雫を垂らしながら私の側に来た。
まるで、子猫のように。
そのまま、の濡れた髪を抱く。
「アフロ・・・包帯濡れちゃうよ?」
「・・・情けないな。」
「アフロ?」
「何が黄金聖闘士だ。こんなザマで・・・。」
「どうして?すごいじゃない・・・あの状態で戻ってきて、ここまでになれたんだよ?」
は私の手を取った。
「アフロは・・・気も失って・・・デスマスクに抱えられて戻ってきた時・・・私、勘違いして。」
「勘違い?」
「アフロが目を覚まさないんだと思って・・・。ショックで、食事もできなくて。」
「・・・。」
震える肩に、そっと腕を回す。
「こうして・・・目を見て、話ができる・・・。アフロは強いよ。・・・それにね。」
の瞳が急に艶を帯びた。私は思わず身体を熱くし、傷が少し疼いた。
「何?」
「こうしてるのが好きなの。」
「こうしてる・・・?」
私はよくわからないながらも、側にあったタオルでの頭を拭いた。
「まったりするの。」
「マッタリ・・・??」
私はまだ日本語がわかっていないのだろうか。
「・・・マッタリって、何だい?」
「二人で、こうして過ごすの・・・何もしないで。」
は私の髪を弄んだ。
「ふふ・・・くすぐったいよ。」
外は雨。
優しく降り続く春の雨。
今日も、二人でこうして過ごそう。
ボロボロになった身体に優しく降る雨。
心まで乾ききった私に降り続く雨。