ジェラシーが止まらない

                                                 
「アフロディーテのバカ!もう!知らない〜!」
「ちょ、ちょっと、落ち着いて・・・。」
久々にゆっくり休暇が取れたというアフロディーテのために夕食の用意をして待っていたというのに、双魚宮で朝まで待ちぼうけを食らわされたは、帰ってきたアフロディーテを見つけるや否やクッションを投げつけた。朝まで飲んでいたらしく、彼の上着のボタンはずれ、およそ美の聖闘士らしからぬ風体であった。
「連絡ぐらいしてよ!今日は二人で過ごすってずっと約束してたのに!」
「いや・・・連絡しようがなくて・・・。聖域(ここ)には連絡手段も・・・。」
「じゃあ早く帰って来てよ!お酒臭いし・・・そんなに飲まないんでしょ?どこいってたの?あっ!デスマスクとかカノンと一緒に変なところ行ってたんだ!」
・・・大きな声出さないでおくれ・・・。」
アフロディーテは辛そうに頭を抱える。
「もういいよ・・・帰る。料理、あっためて食べてね・・・じゃ。」
は溜息をつき、くるりと踵(きびす)を返した。
・・・待って・・・。」
は腕を捉まれ、抱き寄せられた。
「やだ・・・お酒臭いってば・・・。」
「変なところなんて行ってないよ・・・。飲んだだけで・・・そんないかがわしい所なんて・・・。」
「ほんと?」
「悪かったよ。私は・・・。」
はアフロディーテの背を撫でると、にっこり微笑んだ。
「・・・お味噌汁、作ってあげる。日本では、二日酔いには一番いいんだよv」
いつも、のせいで付き合いが悪くなったと言われているアフロディーテ。偶には男同士で楽しく過ごすのもいいんだろうな、とは思った。


「あ・・・。」


「アフロディーテーッ!!!」


は、ベッドに横になっていたアフロディーテの枕をひっくり返した。
「うわっ!な、何?!」
「何じゃな〜い!これ、誰?誰なの!」
アフロディーテの上着のポケットから落ちた、一枚の写真。
妖艶な・・・見たこともないような美女。アフロディーテをそのまま女にしたような・・・。
「???」
アフロディーテには全く覚えがなかった。
「あ・・・姉、だ・・・。」
「そんな話初めて聞くけど?!」
「じゃあ・・・妹・・・。」
「アフロ〜!!」
アフロディーテの記憶がうっすらと蘇ってきた。酔いつぶれて半分眠っている状態の自分のポケットを誰かがいじっている・・・。
「カノン!デスマスク!ミロ!」
「何ぶつぶつ言ってるの〜!誰なのこれ?」
「こ、これは、悪戯なんだ!・・・誰なんだろう・・・本当に・・・。」
「・・・さよなら。」
・・・!」


(「あいつら・・・ブラッディローズ3本・・・いや、かける2で6本・・・。」)
が扉を開けようとした、まさにその時だった。
「こんにちはv沙織さんのお使いで来たんですが・・・あれ?」
「・・・瞬ちゃ〜ん!!」
そこにはアンドロメダ座の美少年聖闘士。
「あ、さん来てたんですね。ごめんなさい。僕、お邪魔だったかな。」
「瞬ちゃ〜ん!私の恋人になって〜!年上はキライ?」
は優しく微笑む瞬の胸に抱きついた。
さん・・・?あ、あの・・・お・・・。」
の向こうに恐ろしい形相のアフロディーテを見た瞬は、を肩からそっと離した。
「どうか・・・しました?」
「アフロディーテが浮気した・・・。」
「だからそれは悪戯だと・・・あっ!瞬よ、君ではなかろうな!この写真・・・。」
アフロディーテは瞬に例の写真を見せた。
「・・・貴方、初対面でいきなり僕のこと女顔呼ばわりしてましたけど!僕にはそんな趣味ないです!」
「アフロ!何瞬ちゃんのせいにしてるの?最低!エロ魚〜!」
・・・。」
あのアフロディーテが半泣きになっている。瞬は、アフロディーテにとっていかにという存在が大きいのかということを知らされた。
「あれ・・・これは。」
「瞬ちゃん、この女の人知ってるの?」
「これ・・・ミスティですよ・・・白銀と青銅の合同宴会の罰ゲームで、ミスティが女装させられて・・・沙織さんが面白がって化粧して・・・胸まで入れられちゃって。大変だったんですよ〜。」
「ミスティ・・・さん・・・。」
沈黙が流れる。
「あっ、僕大事な用を思い出しちゃったから・・・失礼しま〜す!」
青銅一気のきく男・瞬はそそくさと立ち去った。


「アフロディーテ・・・あ、あのね?」
は私を信じていないのだね?」
アフロディーテは静かに、低い声で言う。
「怒った・・・?ごめん。ごめんね。だって・・・不安だったから・・・。」
今度はが目にいっぱい涙をためている。その様子に、アフロディーテは自分の憤りも忘れ、ふるえる彼女の肩を抱いた。
「不安?何が不安だというのかい?」
「だってアフロはそんなに綺麗だから・・・!私なんかより素敵な女の人がいっぱい寄ってきそうだし!いつも、いつも不安だった・・・。」
「そんなことを・・・思わせていたのだったら、ごめんね?」
「何で、謝るの?」
「足りなかったんだ・・・伝えられなかった、安心させてやれなかった、私が悪い。」
「アフロ・・・?」
「愛しているよ。いつも。」
そのままアフロディーテはを抱き上げた。
「アフロ・・・ダメだよ、寝てなきゃ・・・。」
「こんな泣き顔のをそのままにして、寝てなんかいられないよ。」
アフロディーテは指先での涙をすくう。
「ほんとに・・・ごめんなさい・・・。」
「いいから・・・もう泣かないで?」
二人は以前よりお互いを確かめ合うことができた喜びを、そのまま愛の行為に移した。


その後。

(巨蟹宮)「ちっ・・・赤か・・・この程度とすると、大して大事にはならなかったか。面白くないわ。」
(双児宮)「・・・カノン!貴様、アフロディーテに何をした!うう苦しい・・・掃除はお前がやれ!」
     「兄さん・・・教皇の時の仮面貸してくれ・・・窒息する・・・。」
(天蠍宮)「アフロディーテめ・・・負けん。蠍座の恋は一途な恋だ・・・、愛している・・・。」
巨蟹宮・双児宮・天蠍宮に魔宮薔薇が吹き荒れたのだった・・・。




END