銀色のシンデレラ―2―




「そうなんだ・・・は一人でこのホテルに泊まっていたんだね。」
「あ、はい・・・。」
いつの間にか、KAMIJOさんは私を呼び捨てにしている。すごく自然に。
今度はエメラルド色のカクテルが運ばれて来た。何だか、強いお酒ばっかりのような気がする・・・。酔いがふわふわと回っていく。お酒にはそんなに弱いわけじゃないのに。
それは・・・やっぱり、KAMIJOさんと一緒にいるから?
ずっと、ずっと憧れていたと二人きりでお酒を飲んでいる。
彼の手は、知らず知らずのうちに私の肩に置かれている。
「ケーキ、まだ食べていないんだよね?」
「はい・・・。」
「一緒に・・・食べてもいいかな?」
「はい・・・えっ?!」
びっくりしてKAMIJOさんを見つめた。
「びっくりした・・・?こんな僕は嫌いかな・・・ごめん。君があんまり・・・いや。」
私は一瞬何が何だかわからなくなったけど、とても大事なことを思い出した。
「KAMIJOさん・・・今日、お誕生日なのに・・・いいんですか?」
「いいって?」
「あの・・・誰かと約束、とか・・・。」
KAMIJOさんは苦笑した。
「何にも。一人きりの誕生日だよ。」
「・・・。」
「いや、もう一人じゃない・・・君がここに来てくれたから。」
「KAMIJOさん?」
「あんな事したのは・・・初めてだよ。どうしても、もう一度会いたくて・・・でも、スタッフも皆見てたから、電話番号とかも書けなくて・・・この店の名前にしたんだ。君が来てくれるかどうか・・・賭けだったけど。」
KAMIJOさん・・・一人だったんだ。今日が誕生日なのに。
華やかなイベントが終わったら・・・こうして一人でお酒を飲んでいたんだ。
そう思うと、一人の男の人として、この人がいとおしく感じられた。
「私・・・お祝いしてあげられますか?」
「もう、してくれてる・・・。」
KAMIJOさんが微笑む。満月の光に照らされて、とってもきれい。思わず見とれてしまった。
「大丈夫?酔った?」
「大丈夫・・・です。」
「部屋まで・・・送っていくよ。僕もここに泊まっているけど。もう閉店みたいだから。」
いつの間にか、日付が変わっていた。



KAMIJOさんは、本当に私を部屋まで送ってくれた。
「おやすみ・・・また、会えるかな?」
「はいっ・・・あの、KAMIJOさん?」
「え?」
「バースデイケーキ・・・イベントでは食べてなかったけど・・・。」
「ああ、時間がなかったね。」
「よかったら・・・食べませんか?」
こんな私は初めてだった。
「いいの?」
「あんまりいい部屋取ってないけど・・・本人が一口も食べないなんて、やっぱり寂しいから。」
・・・ありがとう。優しいね。」



私はお湯を沸かし直し、二人分の紅茶を淹れた。
「ティーバッグで・・・ごめんなさい。」
「いいよ。ありがとう・・・久しぶりだな。こういうのは。」
さっき寂しく一人でケーキを食べようとしていたこの部屋で、KAMIJOさんと二人きりでいる。
夢なら、そろそろ覚めるころかも・・・。
そんなことを考えていると、KAMIJOさんが私の顔を覗き込んだ。
「どうしたの?」
「いえ、何でも・・・。」
ケーキは大事に持ってきたおかげで、少しも崩れていなかった。
「美味しい〜!イチゴがいっぱいで、美味しいですね。」
「そうだね・・・。」
「はい?」
「ここなら・・・できるかな?」
KAMIJOさんは指先にクリームをつけた。
「あ・・・。」
「口・・・あけて?」
(「いつも私は、何か大事なものを逃してしまう・・・。」)
いつの間にか、私の唇はKAMIJOさんの指先に吸い付いた。
「どう?」
「・・・甘い。」
ボーっとしていた私は我に返ると、かあっと頬を熱くした。
「も、もうっ!」
「ふふ・・・ごめんね。・・・僕も食べたいな。」
「な・・・何?」
KAMIJOさんの顔が近づいて・・・私の唇に付いたクリームを・・・舐めとった・・・。
「ふわっ?!」
。これからも会いたい・・・。ファンとかじゃなくて・・・。」
「・・・うん。」




それから、私たちの甘い伝説が始まりました・・・。
嘘みたいな、ほんとのお話です。




END