刹那の夢
にはわかっていた。
この人とは・・・いつかは道を異にするのだと。
「・・・もう、帰るよ。」
は、ベッドから飛び降り、彼を見ないまま、脱ぎ捨てられていたブラウスを羽織った。
「そうか・・・。」
彼も、を見ないまま、煙草に火を点ける。
の大好きな、その匂い。
「あんたみたいなお嬢さんにゃ・・・これからのゲームはちと遊びが過ぎる。」
「遊び・・・。」
(「私のことも、そうだったの?」)
そんな陳腐な台詞は彼・・・次元の前では吐けそうに無い。
「そうね。」
はあの女性(ひと)の真似をしてみた。憧れてやまないあの女性の。
次元が身を置く世界に・・・自分も足を踏み入れることができたら?
(「そしたら、一緒にいられるのかな。」)
「・・・。」
(「ダメだ。不二子さんみたいにはなれないよ。
涙が止まらない・・・ああ次元、私を見ないで。みっともない私を見ないまま・・・別れていってよ。」)
「見ないでっ!」
はシャワールームに逃げ込んだ。
「・・・。」
「見ないでっ!私にも・・・プライドがあるから。」
「やっぱりお前ぇは・・・可愛いお嬢ちゃんだな。」
次元は、後ろからをぎゅっと抱いた。
「可愛いなんて言わないで・・・バカにしないで!私も・・・いい女でいたい。」
「なれるさ・・・もっと時間をかけりゃあ・・・お嬢ちゃん。」
「あ・・・。」
の、大好きなキス。
次元の、煙草の匂い。
「だって・・・次元は待っててくれないんだもん!」
「・・・すまねえ。」
(「ルパン・・・教えてくれ・・・こんなお嬢ちゃんには・・・何て言ってやったらいいんだ・・・。」)
腕の中のに投げかける言葉が見つからず、次元は珍しくあせっていた。
「次元・・・ごめんね?」
「何を謝る?」
次元はの髪をくしゃっと撫でた。
「こんな私の相手してくれて・・・ありがとう。」
「。・・・自分をもっと・・・愛してやりな。」
「次元・・・。」
を危険の中に巻き込んだのは自分。
今まではどんなに惹かれる女と出会っても、そうなってしまう前に、知らず知らずのうちに遠ざけていた。しかし、彼女は、は・・・。
「大好きよ、次元。」
そうして、はいつものようにふわりと笑い、次元の首に抱きついた。
「私と居て・・・楽しかった?」
「・・・ああ。」
「忘れない?」
「ああ。」
刹那、次元はをさらって、二人で生きていくという夢を見た・・・ような気がした。
ほんとうに、一瞬の夢だった。
「それなら私も・・・忘れない・・・。」
「お前ぇは忘れな。」
次元は優しく笑った。
「何でっ?」
は更に強く、次元の首に抱きつく。
「?」
「え?」
「・・・いい子だ。」
最後の夜が明ける。
次元は泣き疲れて眠るに口付けを残すと、マグナムと上着を手にし、帽子を目深に被った。
「よ〜お次元ちゃんvvいい夜だったかな?」
「サンには・・・何と言ったのだ。」
次元はもう一度、の眠る部屋を見上げた。
「・・・行こう、ルパン。」
「忘れな・・・。」
次元はもう一度、呟いた。
END
初めて書いてしまいました・・・次元夢ですっ!
難しい〜!
「次元はそんなこと言わないだろ!」の連続で、なかなか書けませんでした。
私のネット人生の始まり?であった「桃源郷」の桃様に捧げます!
こちらの小説の「あらすじ」を図々しくも書かせていただいた時から、ずっと書いてみたいと
思いつづけていた次元夢小説でしたv