Sweetest Lovers





「アフロディーテ様・・・?おはようございます!朝ですよっ!」
聖域12宮最後の宮・・・双魚宮の主・アフロディーテの寝室に毎朝のように響く声。
「もう・・・拝謁の儀式に遅れてしまいますよ!アフロディーテ先生っ!」
「ううん・・・・・・先生はやめてくれないかい?」
アフロディーテはようやっと身体を起こす。
「あっ、やっと起きましたねアフロディーテ様。もう、最近寝起きが悪いですよ。アテナがこちらにいらしている間くらい、遅刻しないようにしてくださいね!」
「ふふ・・・まるで新婚だな・・・。」
「なっ・・・。」
アフロディーテの弟子(一応そういうことになっている)は顔を沸騰しそうな程、紅くする。
「だいたい、私をちゃんと寝かせてくれないのは誰のせいなのかな?」
そう言ってアフロディーテはの額に口付ける。
「ん・・・もうっ!」
そのまま唇が重なり、はアフロディーテのベッドの上にドサリと落ちる。
「駄目・・・遅刻・・・しちゃうよ?」
「今、欲しいのだ。」
「でも・・・。」
「師の命令が聞けないの?」
「またそれを言うんだから!都合のいい時ばっかり!」
「命令だ。今からこのアフロディーテに抱かれよ・・・。」
「も、もう〜!知りませんから・・・!」



アテナ神殿。沙織に拝謁をすべく、黄金聖闘士達が全員揃って・・・いるはずである。
「皆さん、ご苦労様です・・・。」
たおやかな笑みを浮かべ、沙織が現れた。
「アテナ、大変に申し訳ありませんが・・・まだ黄金聖闘士が揃っておりませぬ。」
サガが進み出て、沙織の前に跪く。
「まあ・・・誰が?」
「アフロディーテが・・・このアテナ神殿に最も近い宮にいながら、いまだ姿を見せません。」
「アフロディーテが?・・・時間には正確な人のはずですが・・・どこか具合でも悪いのですか?」
心配そうに首を傾げる沙織に、たまらずデスマスクは吹き出した。
「クク・・・違いないな。」
「デスマスク!アテナの御前で余計なことを言うのではないぞ!・・・いや、アフロディーテは・・・日々新しい弟子の育成に熱心で、少々疲れ気味の・・・。」
「いいねえ。俺も育ててみたいもんだな!手取り足取り・・・。」
「だっ、黙れデスマスク!」
必死に弁明するサガに、デスマスクはますます大笑いをし、ミロやシュラまで二ヤついている。
「よ、よくわからないのですが・・・アフロディーテが弟子を育てているとは初耳ですね。でも、よほど大事にしているのですね・・・カミュ、貴方のように・・・。」
隣の宮で、日々双魚宮から漏れる睦言を聞かされているカミュは心の中で溜息をついた。




「アフロディーテ様・・・買い物に行かなければ。」
既に陽が高くなっている。
「今日はいいよ。」
アフロディーテは起き上がろうとするの手を握った。
「でも・・・夕食の材料も無いんです。」
、今日は外で食事しないか?」
「良いのですか?でも、皆さんに見つかったら何か言われるんじゃ・・・。」
アフロディーテの無断欠勤の言い訳を、はあれこれと考えた。
「大丈夫。を鍛えていて、夢中になった・・・と言えばいいさ。」
「駄目ですよ、そんな言い訳では。・・・アテナのお叱りを受けます。・・・それより、サガ様のお叱りの方が怖いですよ。」
「大丈夫だったら・・・さ、準備を。師の命令。」
これが出たらは逆らえない。
(「くやしいなあ・・・私も何かそういう呪文がないかなあ・・・。」)



、準備はできたかい?」
「はい・・・うわっ、アフロディーテ様・・・かっこいい〜!」
私服のスーツに着替えたアフロディーテは髪を一つにまとめている。は黒のスリップドレス。アフロディーテはの肩にそっとショールを掛けた。
「行きましょう?姫君。」
「は・・・はい・・・っ。」
空にはいつの間にか、白い月が浮かんでいる。はそっとアフロディーテの腕に自分の腕を絡ませた。



「待て!」
双魚宮へ続く階段に、何人もの影がが立ちはだかる。
「アフロディーテ、今日の失態は何と説明する。」
「アテナに対する無礼・・・覚悟はできていますね。」
黄金の鎧が、二人をずらりと囲む。
「あ・・・皆さん・・・ごめんなさい!私が悪いのです!」
・・・お前のせいではないだろう?さあ、顔を上げて。」
シャカがの両肩に手を置き、優しく微笑んだ。その様子を見て、アフロディーテは赤い薔薇を構える。
「何をするつもりだ・・・シャカよ。」
「物騒な物は仕舞いたまえ。我々は、君の為を思ってわざわざやって来たのだぞ。」
「あなたの生活態度の乱れを直すべく、をしばらく引き取らせていただきます。」
「何っ!をどこに連れて行く気だ!」
「心配すんなって。アテナのお嬢ちゃんの部屋でしばらく寝泊りしてもらうだけだ。」
「あっ!な、何をする!」
アフロディーテは押さえつけられ、その隙にはアルデバランに横抱きにされてしまった。
「アフロディーテ様〜!」
〜!」



!おはよう・・・こんなに朝が来るのが待ち遠しかったことはないよ!」
「アフロディーテ様、これで遅刻はしませんねvでも・・・まだ四時ですよ・・・ふわぁ・・・早過ぎですよ・・・。」
それ以来、アフロディーテは朝の拝謁に遅刻をすることはなくなった。は、住み込みで沙織の身の回りの世話をすることを仰せつかり、アテナ神殿に暮らすことになったのだ。アフロディーテは毎日、とんでもなく早い時間にやって来た。
「全く・・・どうして私たちが引き離されなければならないのだ!」
を抱き締め、アフロディーテが叫ぶ。
「どうしてって・・・アフロディーテ様が遅刻ばっかりしてるからでしょ?」
「しかし、こんな・・・、まだ皆は来ない。アテナもお休みだ。その前にっ!!」
「駄目〜!ここ、アテナ神殿ですよっ!・・・んっ。」
の唇をアフロディーテが塞いだ、その瞬間。二人の背後で巨大な小宇宙が弾けた。
「なななな・・・何をしている!貴様ら、神聖なるアテナ神殿で!」
「シオン様っ!」
「さすがに老人は朝が早いとみえるな・・・おっと失礼。」
シオンの目つきが変わる。
「アフロディーテ様!何てことを!」
「貴様は魚らしく、エーゲ海ででも頭を冷やして来い!UROTAERUNA−KOZO!」
「キャーッ!アフロディーテ様ぁ〜っ!」



双魚宮でのスイートな暮らしが戻るのは・・・いつのことであろうか。