「テレホン・ショッキング!」 
乙女座の黄金聖闘士・シャカは、女神城戸沙織とともに日本を訪れていた。目的は沙織の護衛。今までこの役をシャカが務めたことは全くなかったのだが、沙織は最近いつもシャカを連れてくる。
その理由は――
「沙織お嬢様、お帰りなさいませ。」
「まあさん、遅くなってごめんなさい・・・。さあ、シャカが待っていますよ。」
「え・・・?」
「今日は早くお帰りなさい。せっかく会えるのだから。」
沙織は微笑むと、後から玄関に入って来たシャカの前にを押し出し、
「私は子供ですから、立ち入れないわ。」
ふふっと可愛らしく笑い、自室へ向かった。
「シャカ・・・久しぶりだね。」
「仕方あるまい。君がギリシャに来ないというのだからな。」
相変わらずの物言いに、は思わず苦笑した。
「だって私にもお仕事があるもの。シャカと同じ・・・って程じゃないか。でも責任があるから。そんなに日本は離れられないよ。ごめんね。」
は城戸邸で、グラード財団総帥としての沙織の秘書を務めていた。一度沙織に付いて聖域に行った時、初めてシャカは彼女に出会った。それ以来、シャカの中で何かが変わった。人を愛することの喜びと。
そして・・・愛するゆえの不安。嫉妬。
「責任・・・そうなのかね。」
「ごめんね。でも今度お休み取ったら、すぐにでも飛行機の切符・・・。」
「そんなものは必要ない。私が迎えに行く。で、休みはいつなのだね?」
は期待に満ちたシャカの声に、申し訳なさそうにうな垂れた。
「ううん・・・まだわからないの。人が最近辞めちゃったから忙しくて。電話とかあったらいいのにね。」
「電話・・・ああ、アテナが持っていらっしゃったあの小さなものか。」
「そう、これ!」
は自分の携帯電話を出してシャカに見せた。
「どう〜?鎌倉のお土産の大仏ストラップv」
「こ、これで話ができるのだな?・・・君はこれで、誰と話をしているのだ!」
「あっ!ダメだよシャカ!それ!」
シャカはの携帯をいじくりまわす。
「あっ!発信しちゃったよ!」
『もしもし・・・ちゃん?どうしたの?』
「名前を名乗りたまえ。」
「ちょ、ちょっとシャカ〜!」
は携帯をを奪い取った。
「ご、ごめんね美穂ちゃん!あとで掛けなおすから・・・気にしないでね!」
「ふむ・・・便利なものなのだな。」
「もう!ね、シャカも携帯買おうよ!」
「そうだな・・・それですぐに君と連絡が取れるのなら・・・外国でも大丈夫なのかね?」
「うん、今は便利になったからね。じゃ、明日買いにいこう!」
その時・・・
♪「薔薇は薔薇は〜美しく咲い〜て〜薔薇は薔薇は〜」♪
(「こ、この着メロは!マズイ!」)
「む?鳴っているぞ。取らなくてよいのかね?」
「あ・・・ああ、いいのいいの。さ、私もう仕事終わりだから、うちで御飯食べよう?」
「うむ。気になるが・・・まあよい。つかまりたまえ。」
はシャカに抱き上げられ、一瞬にして自宅に着くことができた。
「シャカ、お風呂先に入っていいよ?」
「何を言う、私は客人だ。君が先に入りたまえ。」
「うん・・・(逆なんじゃないの?普通・・・)わかった。」
はそっと携帯の電源をオフにする。その隙を、シャカは見逃すはずは無かった。
「これを押すのだな・・・済まぬ。私は君のことなら何でも知っていたいのだ。」
その時。
♪「薔薇は薔薇は〜・・・」♪
「ぬっ!先程の・・・だ、誰なのだ?・・・はっ!こ、これは!」
シャカはの携帯に出た・・・は知るよしもない。
「・・・(無言)。」
「もしもし??もうお風呂には入ったのかい?」
「うむ。これから一緒に入るところなのだ。」
「・・・え・・・?」
声の主は・・・88の(略)天と地のはざまに輝きを誇る美の(以下略)・・・。
「シャカ?!」
「そうだ!何ゆえ君がの携帯の番号など知っている!このシャカは携帯電話というものの存在さえ今日初めて知ったというのに!」
「いや、偶然・・・私が日本に行ったとき、が落としたのを拾ったんだ!彼女とは何も・・・。」
「シャカ・・・どうしたの?・・・あっ!」
シャカの大声を聞いてはバスタオル一枚で飛んできた。
「シャカ!何で私の携帯で話してるの〜!」
「い、いや・・・それより、何ゆえ私に内緒でアフロディーテと・・・許さん!」
「ちょ、ちょっと何す・・・。」
「天魔・・・降伏!降伏せよ!!」
「キャ〜!だ、だめだってば〜!」
全てが・・・聞こえていた。
アフロディーテの携帯に。
いかん・・・私ってアフロディーテ出さずに終われないのか・・・(汗)
なんでこうなるんだろうか・・・