あのひとは薔薇が嫌い―3―
「アフロディーテ様、買い物に・・・行って参ります。」
「ああ、、気をつけるのだよ。」
はエプロンを外すと、外出着をはおった。
(「何だか・・・弟子っていうより、お手伝いさんみたい・・・。」)
アフロディーテのもとでの生活が始まった。
(「いつになったら、技を教えてくれるのかな・・・あの魔宮薔薇とかいう薔薇を使う・・・。」)
「、どうした?」
「あ、いえ、行って参ります!」
「おい、デスマスク、最近アフロディーテの奴、変わったと思わないか?」
天蠍宮ではミロ、シュラ、デスマスクが酒を酌み交わしていた。
「シュラもそう思うか!なんと言えばいいのだろうな?角が取れた、というか・・・。」
デスマスクはニヤリと笑った。
「ククッ、そりゃあ・・・。」
「何だその笑いは!何か知っているな?」
「まあ、そのうちわかるゼ。」
すると、12宮の階段を、紙袋を抱えたの姿が見えてきた。
「女?!聖闘士ではない、な・・・。」
「アフロディーテの女さ。クク・・・。」
「な、何?!」
デスマスク達の姿に気付くと、は会釈をした。
「あいつは白銀聖闘士のミスティの女だったんだが、敵を取りたいからとアフロディーテに弟子入りしたそうだが・・・それがどうもな。」
「でも、いい女じゃないか。おおい!君もここに来て飲まないか。」
「あ・・・。」
黄金聖闘士3人を目の前にし、は固まってしまった。
「私は蠍座のミロ・・・君は?」
「・・・、です。」
酔いが回っていたミロは親しげにの側に寄った。
「・・・君はアフロディ―テの弟子なんだってな。聖闘士になりたいのなら、仮面をつけねばならんのだが・・・知らないのか?」
「いいじゃねえか。かてえこと言うなって。」
「私は、聖闘士にはなれないのです。・・・処女じゃ、ありませんから・・・。」
3人は顔を見合わせた。
「処女・・・いいじゃねえか別に。俺はむしろ・・・。」
「いやデスマスク、そういうことではない!、そのような掟はないぞ。確かにアテナは処女神だが・・・。」
「え、ええっ!」
は持っていた紙袋を落とし、中の果物が転がり落ちた。
「本当・・・ですか!」
「あ、ああ・・・。」
「ひどい!嘘をつくなんて!」
はそのまま上の双魚宮目指して駆け上がっていった。
「おいミロ、まずいこと言っちまったんじゃねえか?」
「ううむ・・・そうかもしれん・・・。」
「アフロディーテ様!」
アフロディーテは本を読んでいた。
「ああ、早かったね。ありがとう。」
「私・・・私を騙したんですね!」
「え・・・。」
「処女でなくては聖闘士にはなれないって!そんな掟はないと、ミロ様からお聞きしました!」
「・・・そうだ。済まない。」
「私は聖闘士になりたいのです!そうでなければ・・・ペガサスを、殺せない!」
「。」
「・・・帰ります。シャイナさんの所へ行きます。」
アフロディーテの瞳が揺れた。
「・・・君の顔を見ていたかったんだ。聖闘士の女子は、女であることを捨てねばならぬ・・・。」
「アフロディーテ様?」
「君がミスティを愛していても・・・ここで、君を見ていたかった・・・君の声を聞いて、君の作ってくれた物を食べて・・・。」
「ア、アフロ・・・。」
「そして・・・君に、触れたかった。」
アフロディーテの長く綺麗な指が、の頬にそっと触れる。そのまま彼の唇が寄せられた。
「ん、んっ・・・ヤッ・・・!」
の中に拒否の感情を読みとったアフロディーテは、そっと瞳を伏せた。
「あ・・・ごめんなさい・・・あの。」
「私こそ、許しておくれ、・・・。」
の次の言葉は、驚くべきものだった。
「お腹、空いてますよね?」
「え・・・。」
アフロディーテは一瞬きょとんとした。
「すぐ、夕食作りますから。待っててくださいね。」
「・・・・・・。」
(「どうして?私・・・出ていこうとしたのに。」)
勝てなかった。は、勝てなかったのだ。
アフロディーテの、少し潤んだ瞳に。
「なあ、デスマスクよ。」
「ん・・・?何だミロ。」
「アテナを名乗る城戸・・・沙織とかいう小娘が、青銅の小僧どもと一緒に聖域に乗り込んで来るらしいが。」
「ふん、捨ておけ。・・・あのという女、ミスティの敵が取れるってもんだろな。」
「アフロディーテ様、できました!」
「ああ、ありがとう・・・美味しそうだね。」
ゆったりとした時間が双魚宮に流れていた。
しかし、それは長くは続かなかった。