夜会
「家に帰ろうかと思うんだ。」
突然アフロディーテが言った。
「家?家って・・・アフロの実家のこと?」
「そう、スウェーデンの私の家。もう何年も帰ってないからね。それで・・・。」
「何?」
「に一緒に来て欲しいんだ。」
「ええっ?!」
アフロディーテの実家。彼の口からほとんど語られることがなかった、スウェーデンの実家。
「舞踏会があるからね。レディ同伴じゃないといけないんだ。」
「舞踏会って、あの・・・。アフロの家でやるの?」
「妹の18歳の誕生日パーティなんだ。そんなに大きなものじゃないけどね。」
「私・・・踊りなんてできないよ。服も。」
アフロディーテはふっと笑った。
「ドレスならうちで用意するから大丈夫さ。ダンスは私が教えてあげる。メヌエットくらいならすぐ踊れるようになるよ。まだ一週間あるからね。」
一週間・・・大丈夫なのかな。それに「メヌエット」??
「やめようよ・・・アフロに恥かかせちゃうから。そうだ、アテナと行ったら?」
「駄目だよ。君を皆に紹介したいんだ。その為に連れて行きたいんだからね。」
「・・・。」
「私が任務のときは、ダンスに心得のある奴に来てもらって指導してもらうから。頑張ってよ。」
「え、ええ〜っ!!」
「違う!違うってば!そこでターンだろ!」
「あ・・・間違えた・・・。」
「痛い!足踏んでるよ!」
「あ、ごめ〜んアフロ・・・。」
無理だよ・・・ダンスなんて生まれて初めてなんだから・・・。
「、私は出掛けないといけないから・・・それまでに基本のステップだけは覚えておくんだ。宿題。」
「え〜、一人で練習なの?」
「もうすぐコーチが来るから。ちゃんと教えてもらうんだよ。あっ、もし変なことされそうになったら、コレを使うんだ。」
と、アフロディーテが私に渡したのは・・・白薔薇!!
「ひえっ?!これって・・・アレじゃないの?!」
「大丈夫。これはの男よけ専用に作ったブラッディローズさ。死にはしない。不能になっちゃうんだ。」
「男よけ・・・。」
「じゃあ行って来るよv」
「どこ行くの〜!!」
「よお。邪魔するぜ。」
「デッデッ・・・デスマスク!アフロなら・・・いませんけど・・・。」
「何言ってんだ。この俺様がお前のダンスのレッスンに来てやったんじゃねえか。」
「嘘〜!」
「悪りィか?俺はイタリア人だぜ。舞踏会なら馴れたモンだ。」
「ほんとにィ??じゃ、お願いします・・・。」
「いい返事だな。じゃ、早速始めるぜ。」
デスマスクは私の体をグッと密着させた。
「な・・・何?ステップは?」
「バーカ。大事なのはムードだ。」
腰にデスマスクの手が回される。
「、お前・・・いい女になったよな。」
耳元で低く囁かれた。思わず、ビクッとする。
「アイツのせいなのか・・・?」
これは・・・チークダンス、なのかな・・・。
「俺はまだあきらめてねえぜ・・・。何ならこのまま、お前を・・・。」
もう一方のデスマスクの手が、私の顎を持ち上げた。
(「・・・アフロにもらった薔薇、使わないと・・・。」)
「ホントに・・・いい女だぜ、。」
デスマスクの目がちょっと潤んでいるような気がした。そんな彼にブラッディローズなんてとてもできなかった。
「・・・。」
「んっ、デ、ス・・・。」
気が付いたら、デスマスクの唇を受け入れてしまっていた。
(「ごめん、アフロ・・・。」)
すぐ側にはアフロディーテのベッドがある。
(「アフロ・・・早く、早く帰って来て・・・。」)
「、ただいま。宿題はできたかい?」
「アフロ・・・遅いよっ!どこ行ってたの?」
デスマスクは結局、それ以上のことはしないまま帰った。
「君の為に、送ってもらったんだ。これを着て練習した方がいいと思って。裾を踏んだりしたら大変だからね。」
「・・・キレイ・・・。」
それは、アフロディーテの瞳と同じ色の、水色のドレス。小さな薔薇の花の飾りが沢山付いている。
「気に入ってくれた?」
「アフロ・・・。」
私はアフロディーテの胸に顔をうずめた。
「・・・?」
(「ごめんね・・・ごめんねアフロ。あんまり優しくしないで・・・。」)
私、どんどん我儘になってしまうから。
ちゃんと、私のこと見ててね。