浦島太郎伝説と浦嶋神社(京都府与謝郡伊根町本庄)

浦島伝説で名高い浦嶋神社は、本庄地区の平坦な地形の中に静かなたたずまいを見せています。重要文化財に指定されている「乙姫の玉手箱」「縁起絵巻」「嶋子の打ち掛け」などの中世の美術工芸品は、必見の価値があります。

浦嶋子のおはなし(浦嶋子口伝記要約)

雄略天皇22年秋7月7日、丹後国、与謝郡筒川庄、水乃江乃里に住む、容姿端麗な水乃江乃浦嶋子は、ひとり船に乗り、海上に浮かんで釣りを楽しんでいました。

ところが一匹の魚も釣ることができず、三日目には諦めて竿をあげようとしたところ、一匹の五色の大亀をつり上げました。嶋子はおそるおそる船の中に入れ眺めているうちに、やがて居眠りをしてしまいました。

しばらくして目を覚ますと亀はたいそう美しい乙女の姿となって、嶋子を常世の国へ誘い、二人して船にて常世の国へ行きました。常世の国の宮殿は今まで目にしたこともなく、人より聞いたこともなく、とてもとてもきらびやかであり嶋子は乙女に、「夢を見ているのでしょうか?」と尋ねました。

すると乙女は「ここは常世の国でございます。君とともに住むところでございます」と知らされました。その後二人は手を取り合い、乙女の住むという立派な屋敷に案内をされました。乙女の屋敷の門の前で、乙女は嶋子を待たせ、両親に乙女の契の許しを得るため門の中に入って行きました。

その待っている嶋子の前には七人の子供たちと、八人の子供たちが入れ替わり出てきて、「亀姫(神女)の夫になられる方でございます」と知らされ、さんざんいたずらをされました。そこで亀姫(神女)の名前を知りとても不安な気持ちで待たされました。

その後、神女と嶋子は一緒になることを許され、夫婦となって毎日楽しい日々を送りました。ところが三年経ったある日のこと嶋子に故郷への思いがあることを知った神女は、嶋子に美しい衣を着せ、神女の分御霊の入った玉櫛笥(玉手箱)を与えて「再会を期するならば、けっしてこの玉櫛笥の蓋を開けてはなりません、お約束をしてください」と告げて、二人は約束の後、嶋子は常世の浜から船に乗りお供の人たちの手によって送り返されてきました。

水乃江乃里に帰った嶋子は、故郷の人跡は絶えて、古い松、古い杉のそびえる変わり果てた有様を見て驚き悲しみました。やがて、筒川の川の辺で洗濯をする老婆に出会い、「三百年もの昔、嶋子というお人が、海に釣りに出かけられたまま帰ってこられなかったそうだ」という言い伝えがあることを聞かされました。

嶋子は常世の国の生活が、三百年にも当たることを悟り、その後十日間ほど生きていました。その間、日毎に神女を思う心が募り、玉櫛笥の蓋を開けてはならないという約束を忘れて、その蓋を開けてしまいました。すると中から紫の煙が蘭の香りを漂わせて立ち登り、常世の国の方へたなびき、その紫の煙を追って行くうちに、白髪の老翁となり亡くなりました。

京都府与謝郡伊根町立本庄中学校