さて何を聴こうか

僕は音楽が好きで、何かあるとCDを聴いている様です。
バロックを聴きながらの珈琲タイムは素敵だし、
蹲って現代音楽を聴くのもイイ。
またロックを聴きながら爽快にドライブするのは最高にご機嫌で、
感傷に浸りながらバーボン片手にジャズを聴きたい時もある。

クラシックもロックも、本当はライヴが最高。
実際にアーティストの生きた音を聴くべきだと思う。
でも、何かをしながらちょっと聴くには、やっぱりCD。
僕はレコード店で働いていた事もあり
「いつも何を聴いているの?」「何がお薦め?」と言う質問をよく受ける。
じゃあ、って事でこのページを作ってみました。
僕の思い入れのあるお薦め盤です。
(ちなみに作陶しながら音楽は聴いていません。)


vol.1音楽との出会い


ジャケ買い
組曲「惑星」
グスタフ・ホルスト作曲
ネヴィル・マリナー指揮
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
組曲「惑星」と言うと、木星が昔TVニュースのテーマ音楽に使われていて、僕より前の世代の方はきっとそれを思い浮かべると思う。
今では歌謡曲に使われていたりして、若い世代はそっちじゃないかな。
とってもダイナミックでスケール感の大きい曲だ。

この曲は名盤が多いと思う。
カラヤン/ベルリン・フィルは定番だし、ガーディナー/フィルハーモニア管というマッシグな演奏(コレはグレインジャー作曲のソルジャーとのカップリングで、組み合わせが非常に良い)、また若きラトルがフィルハーモニア管を指揮した非常に鮮烈な演奏もある。

しかしマリナーの演奏が僕は好き。
火星や木星などダイナミズムを強調し、オーディオ・ファイル的に評価されるCDが多い中、これはアナログ録音なのに音がいいだけでなく、金星、水星の演奏が非常に美しい。
実はこのCD、中学生時代に楽器店の店主に薦められたときに、LPのジャケットがカッコよく買うことに決めた。
いわゆる「ジャケ買い」である。笑。
LP時のこのジャケトは本当に迫力あったと思う。

クライバーのブラームス
交響曲第4番
ヨハネス・ブラームス作曲
カルロス・クライバー指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ブラームスの交響曲第4番。
クラシック音楽の名曲中の名曲である。
僕はこの曲が大好きだ。
また名演と言われる録音が多い中、これ以上気に入った演奏はない。
またこのディスクは僕が初めて買ったクラシック・レコードでもある。

中学1年の時に吹奏楽部で、自分はレギュラーになれなかったけれど(このころは譜面もロクに読めなかったのだ)先輩達がコンクールの練習をしていた。
これがその時の曲。
弦主体のこの曲を吹奏楽で演奏するなんて乱暴な話だが、当時の吹奏楽はオーケストラ編曲ものの演奏が多かったと思う。
さて実際にどんな曲なのか知りたくてレコードで聴いてみた、と言うわけである。

水墨画のように枯淡の境地である。
嵐の前に雲が流れ行くがごとく、颯爽と吹き抜け、悲しみと愛情の中に涙する。
これがこの演奏の印象。

大家達の名演奏でも、新鮮な現代の演奏でも、このゾクゾクするような感じを体験したことは無いんですよね。

ベームVPO
交響曲第8番
ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン作曲
カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ベートーヴェンのシンフォニーと言うと第5番や第9番のような大曲があるが、僕はどちらかと言うと大曲に挟まれた木漏れ日のような、第4番や第8番の方が好き。

このベームの第8番は、実は第9番「合唱付」とのカップリングで、当時LP2枚組みで出ていた。
実は、第9のレコードを第9番を買ったら第8番が付いてたのである。

ウィーン・フィルは音の幅が広く、奥が深く許容量がでかい。
誰が指揮してもそれなりに良いし、また指揮者と一体になれば最高の音楽をする。
世界最高の芸術家集団の一つだと思う。
僕はベームがウィーン・フィルの音楽監督だったときの音が好きである。

少しクラシックを聴きだして、第9が聴きたくなり楽器店に行ったとき、店主は「ステレオ録音がいいよね?」と聞いてきた。
あとで思えば、彼はフルトヴェングラーの指揮がお薦めだったと思う。
その時店頭に無かったし、その時の国内盤LPステレオ録音の第9番ってコレかカラヤンくらいしかなかったと思う。
また小さな楽器店だったので、そんなに多品種の在庫はできなかったと思う。
しかし、小さなお店ながら、センスのいい品揃えだった。

セルのスラヴ舞曲
スラヴ舞曲全曲
アントン・ドヴォルザーク作曲
ジョージ・セル指揮
クリ−ヴランド管弦楽団
小学校の下校時にいつもスラヴ舞曲がかかっていた。
哀愁漂うこの曲が、閉店間際の「蛍の光」のように恒例で、また寂しく感じ「早く帰らなきゃ」と言う気持ちになった。
クライバーの「ブラ4」を聴き出した中学のとき、この曲を思い出し、曲名をFMラジオか何かでたまたま曲名を知り、楽器店に行ってレコードを購入。

セルの指揮はイイ。
彼が指揮したドヴォルザークやベートーヴェン、シベリウスのシンフォニーも同じことが言えると思うけど、「哀愁」を漂わせ、精神的に引き込む力が凄い。
かと言って決してロマンチックな演奏ではないんだよな。

僕は焼き物を始めて、初めて知った事がある。
楽器店の店主は、しばらくして楽器店の店員ではなく、窯屋の大将になった。
そう言う家柄だったのだ。
実に意外な事実だった。

R・ジェイガー
交響曲第1番
ロバート・ジェイガー作曲
木村吉宏指揮
大阪市音楽団
中学時代テューバを吹いていて、高校入学時に僕はクラブ奨学生として入学した。
しかし、そこにはテューバ吹きだけが5人もいた。
1年生は一人しかテューバをやれなかった。
トランペットもユーホニウムも同じような感じだった。
男子高校だったので部員獲得が難しく、顧問の先生は楽譜の読める生徒が欲しかったのだ。
3年生6人、2年生は15人くらいだったか?後はみんな1年で、3人だけが中学から吹いていた楽器が吹け、残りは奨学生でありながら楽器を変わった8人と、無理やり勧誘した初心者、全部員で40人ちょっと。
もちろんフルメンバー出演。こんな滅茶苦茶なメンバーだったが、全国大会に出場できた。奇跡だと思う。
曲もあまり聴きなれない作曲家の曲だったが中々素敵な曲だった。
今となっては現代における大作曲家と知り、選曲も良かったと思う。

ザイフェルト
ホルン協奏曲
モーツァルト作曲
ゲルト・ザイフェルト(hr)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
高校入学時、テューバを吹ける1年生は一人。
実際彼は凄く上達した。
結果として彼で良かったと思う。
彼以外は楽器を変わらなければならなかった。
フルート、サックス、クラリネット、みんな色んな楽器に変わった。
全員が金管楽器に変わる事は出来ない。楽譜の読み方から変わるので苦労したと思う。
僕はオーケストラの花形と言われるホルンが前からやってみたかった。
それでも中学時に吹いていたテューバには未練があったのは確かだ。

ホルンの先輩は1人しかいなかった。
ホルンは4人。後の3人は僕を含めて全くの初心者だった。
ホルンは譜面の「ド」の位置が一般には[ファ」になっている。
始め吹いて出た音と、譜面に書いてる音とのギャップが大変だった。
また今までテューバはB♭管の楽器だったが、ホルンはF管とB♭管の混合の楽器。
苦心している僕等に先輩がLPを3枚貸してくれた。
いづれもモーツァルト:ホルン協奏曲で、ホルン奏者はブレインとタックウェルとこのザイフェルトだった。
当時あまりにも乾いた音に聞こえ戸惑った。
ホルンとはもっとウェットな音質だと思っていたからだ。
衝撃的だった。

ビートルズ

ザ・ビートルズ
高校入学時、1年生を入れても全学年で30人ちょっとしかいない吹奏楽部だったので、無理な新入生の勧誘が始まった。
このままでは大編成の部として一番大きな全国大会に出られないのだ。
そんな中、無理に誘われてなのか、自発的なのか彼が来た。O氏だ。
サックスのマウスピースをくわえ大音量で校舎中にけたたましく鳴り響いた。
そんな彼は当時ビートルズが大好きだった。
僕も好きでたまにウォークマンで聞いていはいたが、彼はいつもビートルズだったと思う。
彼とは大学まで同じ学校だった。
そして現在、彼はサクソフォン・プレヤーとして活躍している。
ビートルズのアルバムは多い。
あの曲もこの曲もというと、有名な曲だけで何枚にもなってしまう。
でもヒット・チャート1位になった曲ばかり集めたCD「1(ONE)」が2000年に発売された。
リマスターもされ音質も良くなっている。
もっと聴きたいのなら、昔からの定番「赤盤」「青盤」なんてのもある。
どちらもビートルズ解散後に出たベスト盤だ。

ソウル・アローン
ソウル・アローン
ダリル・ホール(S)
レコード店の専門店員はキチガイの集団である。
もちろん録音物含羞のだ。
彼らは収集したCDで、気に入らないものはドンドン「処分」しているのだが、それでもコレクションのCDだけでベットが楽にできるほど持っている。
とあるレコードセールスマンはコレクションのLPだけで2階の 「床」が実際に抜けて大変なことになった。
また僕の働いていたレコード販売店でも、「給料の4割まで」と言う購入条件が後々できた。
みんな食費や光熱費を思いっきり削って、CDやレコードに費やしていたのだ。
病気だ!
僕はPopsレコードにはかなり疎い。
といっても世間一般のユーザーくらいの量のCDはあるかも知れない。
レコード店にいたとき、Pops担当者に「なにかイイCDおしえてよ」と的の無い質問を質問をしてしまったが、彼は快く「君ならきっとこう言うのが気に入ると思う」とこのCDをもってきた。
「ホール&オーツも知らないで外資系レコード店にいたの?」と言われるかも知れないが、実際知らなかった。
雰囲気たっぷりのアルバムで、ライトなビールが良く似合うと思う。

マルサリス
スタンダード・タイムVol.1
ウィントン・マルサリス(tp)
マルサリスと言うと、クラシック音楽において稀代の名演奏家である。
ジャズにおいてもその地位は変わらない。
ジャズとクラシックにおいてどちらもスーパースターであると言う演奏家は、ピアノのフリードリッヒ・グルダと彼だけだろう。
しかしそんなマルサリスのジャズ・ミュージック・スタイルをあまり知らなかった当時、同僚のJazz担当者にマルサリスの音楽性について訊ねてみた。
「僕は色々聴いたけど、まずはコレを聴いてみて。」1枚のCDを出された。
音楽に圧倒されその世界に呑込まれた。
また彼のアルバムを、アレもコレもと聴きたくなり、のめり込んだが、どうやらマルサリス本人はデキシー・スタイルを本当は演奏したいようで、デキシー・スタイルのアルバムを出しだしたころ、マルサリスへの熱は冷めた。

CDを薦めてくれた彼は、アルファ・ロメオの旧スパイダーに乗っていて、とても大切にしていた。
真っ赤なボディーが、暗闇でも輝いていた。
今は何をしているのだろう?
ベートーヴェンの運命 シャルル・ミンシュ指揮
ボストン交響楽団