それがどれほど叶わぬ願いと知っていても

 

 

 

 

 

どうしても、君に会いたかった。

 

この時期、城を出るという事がどれほど危険で、またどれほど自分を守ってくれる人々の迷惑になるか、わからない程の子供ではない。それでも、無性に君に会いたかった。会って、そのまっすぐな心に触れたかった。

きっと君は六年前のままだろう。そう信じて疑わない事は、君に対して失礼だろうか。

 

君に会いたい。

 

こんな最中だからこそ強くそう願う。

この六年間、君が騎士学校にいると知りながらも、一度も顔を見せずにおいてそう願う事も君に対して失礼だろうか。

―――この六年間、会おうと思えば、会う事はけして難しくなかった。しかし僕と会う事で、君をこの醜くも愚かしい争いに巻き込んでしまいたくはなかった。

騎士たちから、君の噂はよく耳にしていたよ。

 

「来年にでも異例の早さで騎士団に入団できそうな有望な青年がいる」

 

「アスベル・ラント―――何でも、ラント領領主の長男だそうだ」

 

 

幼いあの日、騎士になるんだと瞳を輝かせていた君が羨ましく見えた。だからこそ君に僕が近付く事で、この争いに巻き込みたくはなかった。

僕の置かれた状況を知れば、きっと君は僕の力になると言ってくれるだろう。けれどもそれを僕は望まない。

ただ、君に会いたいんだ。

それが今の自分にとってどんなにたいそれた望みか、僕にわからない訳ではない。

けれども、それでも。

君に会えばきっと、この終わりの見えないような今だって、いつか光が差すと信じられるのだと思ったのだから―――…。