「一騎……いいか?」
「何が?」

 二人してベッドの縁に座る、二人きりの部屋。しかも父親が仕事で帰って来ないという理由でのお泊りで、この台詞にこう切り返せるのはある意味才能か、真壁一騎だからたる所以か。
 しかし総士はめげない。いつものことだからだ。
 そう、いつものことなのに相変わらずすぎて、最早これが一連の流れだとさえ思えてくるほどに。だからこの次に出る総士の行動も、驚くほど毎度のパターンとしとて記憶されていた。
「一騎」
「え、あ?」
 呼ばれてきょとんとした顔に苦笑し、しかし総士はその呆れるほど無防備な体をベッドへと押し倒した。ほどよい固さのマットレスがぎし、と軋み、転がされた一騎と、覆い被さる総士の重みを受け止める。
 しかし真下に組み敷いた一騎は相変わらずぽかんとしていた。
「………」
「えっと……」
 そのまま見つめ合っていた時間はどのくらいか。ただ何も言わず見下ろす総士の視線を受け、
「!」
 しかし一騎が唐突に頬とは言わず耳の端まで赤くさせるのも、まさに一連の流れの一部だった。一騎の中でようやく、バラバラだった総士の意図と行動のピースが組み合わさったのである。
「え、えっと……総、士?」
 さっきまでの鈍感っぷりはどこへ成りを潜めたのか。途端に泳ぎだす視線に、しかし総士はまっすぐに見下ろす視線をぶらさず、
「残念だな、一騎」
「うえ?」
 何が残念なのかと、疑問に思った一騎の泳いでいた視線がさらにゆらりとさ迷い、しかし窺うように真上にある総士の視線と交わった。もう、いくら鈍い一騎でもわかった筈だ。
「もうNOと言えるタイミングは越えてしまっている」
「! ちょ、待……んぅ」
 最も、最初から言わせるつもりはなかったことなど、一騎は知りもしないだろう。総士が組み敷いた一騎の体に体を折り重ね、まだ何か言おうとしていた口を塞いでしまう。その為、ちょうど開いていた口蓋に舌をねじ込み、引っ込まれてしまう前に早々に絡み取ってやった。
「んむ、う、うー…っ」
 じたばた、と色気のない声を上げながら一騎が総士の下で身じろぎをする。往生際が悪い…が、それも最初の内だけだ。
 頤を総士の手に押さえられ、口は閉じることができない。しつこく舌で舌を追い、混ざり合った唾液を吸い上げ、粘膜をざらりと舐め上げる。キスをしなれていない一騎は呼吸もままならなく、やがてくたりと抵抗がなくなった。もちろん抵抗がなくなったからと言って、放してやる気にはならなかったが。
「ん…んっ」
「ふ……はあ」
 ぎゅう、と総士の袖を掴んでいた手が、ずるりと力を失ってシーツに落ちた。それを合図とするように、総士は一騎を解放する。欲求のままに貪ったせいか、唇が少し熱を孕んで腫れぼったい。それは一騎も同じで、どちらのものかもわからない唾液にぬらりと鈍く濡れる唇は、紅をさしたかのように赤くなっていた。
「一騎」
「っ」
 浅い呼吸に忙しなく上下する胸に手をつき、耳元に顔を寄せて名前を呼ぶ。それだけで肩がびくりと震えて、一騎が体に力を込めたのがわかった。
 これも相変わらず、いつまでたっても慣れない。真っ赤な顔で、体を固くして。力を抜いて身を任せた方が一騎自身も楽だというのに、それができない。それがけして嫌がっているからではないのは、再びぎゅうっと掴まれた袖からわかるのだけど。
「うあ、やあ…!」
 ぬるりと唇を寄せた耳に舌を這わせ、柔らかい耳たぶを軽く歯で食む。総士の欲望に気が付いて、そしてキスで火の付いた一騎の体はどこかしこも敏感になる。
 総士が触れるごとに戸惑ったような反応と、上がる甘い声。一騎はどうやらそれに夢中になってしまうことを怖がっているようだ。だったら早く、何もわからないようにしてやればいい、というのが総士の考えだ。
 その方がきっと、一騎も夢中になれるだろう。
「そ、し…っ」
 耳たぶから耳の裏を辿り、首筋を舐め下ろす。その間にもシャツの裾から手を入れ、余分な肉のほとんどない滑らかな肌を手の平で堪能した。じんわりと浮かぶ汗が、手の平に肌を吸い付ける。ファフナーに搭乗すると、パイロットはその受けたダメージを痛みとして感じ取る。しかし実際に腕が切り飛ばされたり傷が浮かぶわけではない。だから誰よりも多く死地に立つ筈の一騎の肌でさえ、とても綺麗だった。
「ア」
 浮かんだ細い鎖骨に歯を立てると、一騎がぴくん、と震える。震えて、わずかに腰を揺らめかせたのに総士は気付いた。
「慣れない割に、反応はいいんだな」
「なに、が」
「自分で気が付いてないのか?」
 少し驚く。いや、一騎ならあり得なくはない。
 総士は一騎の体温が移っていつもより温かく感じる手の平で、早急に一騎の股間に触れた。
「ぎゃ」
 色気がない。だがそこは衣服の中にあって、確実に形を変えていた。まだ体の敏感な部分にはどこも触れていないというのに。
「一騎、もう勃ってる」
 総士は衣服の上から一騎のそれの形をなぞる。持ち上がった先端が、布地を押し上げていた。
「や、あ、わかんな…っ」
 強情な。けれども総士が手の平でそこをさする度に、一騎の腰が揺らめく。感じてない筈がない。だからといって一騎が恥ずかしくて嘘を口にしているわけでもなく、単にそれを表現する言葉が不自由なだけだと判断する。
「気持ちがいいものは、素直に口に出した方が楽だ」
「だから、わからないって…っあ、ちょ、待て、待てって」
 総士の手が性急にズボンにかかる。慌てて伸びてきた手をかいくぐり、ボタンを外してファスナーをジャッと引き下ろした。
「ひぃっ」
 勃起したそれの上を金属の塊がなぞって動く様に、一騎が悲鳴を上げて大人しくなる。それをチャンスとし、総士は下着ごと、その足を覆っていた邪魔なものを引き脱がしてしまった。そして膝の裏に手を当て、ぐいっと左右に体を割らせる。
 中心で、先端から溢れだした雫を滴らせた一騎のそれが首を擡げていた。
「ほら、もうこんなに」
「やだ…っ見る、な…っ」
 ぶるぶると震える一騎が、真っ赤になった顔を自らの手で覆う。けれども総士はそれを許さない。足の間に体を割り込ませてそれ以上閉じられないようにし、腕を伸ばしてその覆う手を無理矢理外させた。
「何故隠す?」
 顔を覗き込めば、潤んだ目が真下からじろりと睨んでくる。
「だって、恥ずかしい、だろ…!」
「直接触っていないのに勃起しているからか?」
「ちが…っ、いや、そう、じゃなく、って……」
 たぶん一騎はそういうことを言いたいのではないだろう。純粋に行為自体が恥ずかしい。けれどもそんなものは今更だ。しかしいつまでもこういう初な反応が、総士にとっては嬉しくもある。
 羞恥に身を捩る一騎が、自分の与える快感で徐々に理性を失っていく様に、自分は酷く興奮するのだという自覚があった。それはこの行為によって一騎を支配したい、という暴力的な衝動とは少し違う。
(一騎に理解してほしい、というのはまだ難しい、な)
 ただ、酷いことをしたいというのではない。こうすることで得られる一体感、心地よさ、お互いの存在を確かめたことの安堵感、そういったものを共有したい。それだったら他にいくらでも方法があるだろうが、敢えてこの行為を選ぶことは、心が繋がっていても触れられない時間を、少しでもその隙間を埋めたいと思うからだ。
「一騎、お前だけじゃない」
「っ」
 総士は掴まえた一騎の手を、自らの足の間に導いた。衣服を乱され、下は最早何も身に着けていない一騎とは違い、総士は上着を脱いでスカーフを外し、シャツのボタンをいくつか外しただけだ。まだきっちりと閉じられた制服のズボンの前は、しかし一騎がその存在をしっかりと指で確かめられるほど昂っている。
 布地の上から触られただけで、じわ、と熱が広がるのを感じながら、総士はゆっくりと一騎の手を自身の上に滑らせた。
「かた、い…」
「ああ。一騎が感じているのを見ているだけでこうなる」
「っ、へんたい、だ」
「ひどいな」
 くっと喉の奥で笑い、名残惜しく一騎の手を解放した。
「わかったか。一騎が気持ちいいなら、僕も気持ちよくなれる。だからもっと素直になれ」
「………努力、する…」
 ぼそぼそとまだ何処か不満げに答える一騎に、いい子だとその頭を撫で、軽くキスをする。するとぎゅうっと首にしがみ付かれ、肩口にぐりぐりと額を擦りつけられた。そんな普段よりやや幼い反応に胸が愛おしさに溢れ、髪にもいくつか唇を落とし、そして。
「っ、あ、や、ああっ」
 一騎の昂ったそれを、手の平に捉えて上下に扱き始める。不意を突かれた一騎はそのままぎゅうっと総士の首にしがみついたまま、唐突に与えられる強い刺激に声を上げた。
「やだ、つよい、あ、…あ!」
 体勢から、直接耳に注ぎこまれるような嬌声が総士の腰に熱を集める。下着の中ではもう十分昂ったそれが、早く一騎の中に熱を放出したくて疼いて仕方がなかった。けれどもまだ、一騎の準備が整っていない。羞恥は感じさせても、痛みや、恐怖は与えてはだめだ。そんなものを与えては、一生、一騎に自分の気持ちは理解してもらえなくなってしまう。
「一騎」
「あ、ふ…あっ、あ」
 総士は優しくその名を呼ぶと、しがみつく腕を離させる。その間も緩やかに手は上下させたままなので、一騎は小さく喘ぎながらもされるままだ。そんな一騎を見ながら総士は一騎のぐいっと足を押し開き、その間へ更に体を割り込ませた。
 そして、
「っひ、あ、そぉ、し…っ!?」
 十分に硬度を保ち、先端をぬるつかせながら上を向くそれを、総士はためらいもなく口に含んだ。驚いた一騎が一瞬暴れるが、足を押さえ付け、じゅるじゅると唾液を音立てながら頭を上下させてやると、混乱よりも快楽が上回って大人しくなる。彷徨う手が髪に絡んで、弱々しくぎゅうっと引っ張った。もちろんそんな程度では、総士の行為を止められる筈もない。
「だめ、だめ…そーしっ、あ、くる…っ」
 小刻みに腰を震えさせる一騎が、訴えるように悲痛な声を上げる。駄目、というのは、出してしまうから離せ、と言いたいのだろう。けれどもその訴えとは逆に、総士は口淫を激しくした。咥え込んだ喉の奥で締め付けながら、ざらりと竿の裏を舌で舐め扱く。
 その途端、太ももの震えが大きくなり、一騎が腰をぶるりと大きく震わせた。
「あっ、あっ、あ―――っ…!」
「…んん…っ」
 一騎は背中を弓のように反らせ、果てる。口内に溢れる青苦くどろりとしたそれを、総士は躊躇いなく飲みこんだ。その時、ごく、と喉が鳴る音が、自分の音だというのにとても生々しく聞こえた。
「はぁ…あ……、はあ……っ」
 果てた一騎は余韻にぴくりぴくりと震えながら、軽くどこか意識を飛ばしているかのように天上を見つめたままだった。その間に総士は体を起こし、ポケットから探り出したパウチの口を千切り取る。揃えた指の上に落とす中身は性交用のローションだ。粘り気の強いそれを手の中で弄んでやると、冷たかったそれが多少温まってくる。するとだんだんとろりと蜂蜜のように柔らかくなってきた。
 その頃合いを見て、総士はいまだ余韻に痺れている一騎の後ろへと手を滑り込ませる。
「ひゃっ、な、何?」
 すると流石に我に返った一騎が、びくりとしてこちらを見る。その時には既に総士の指は一騎の秘所へと添えられていた。
 既に前から垂れてきた先走りで多少濡れた感はあるものの、ここで交わるには到底足りない。それを補うためのローションだ。男同士ではどうしても濡れなくて必要になる。何度か体を重ねた一騎なら、そんなこととうにわかっている筈なのに。
「入れる。力を抜け」
「っ」
 ちょん、と額にキスをしながら、総士は秘所に添えた中指をじわじわとそこへ埋めて行った。さすがに一騎も始めの頃、力を抜かなかったばかりに得た辛さを覚えていたようで、総士の首に再びしがみ付き、深呼吸でもするかのように深い、けれども震える呼吸を繰り返す。しかしそのおかげで指一本の挿入はわりとスムーズだ。
 ただ、一本では足りない。中指が第二関節ほど埋まると、すぐに人差し指もそれに沿え、一本目より更にゆっくりとそれも埋めていく。
「一騎、大丈夫か?」
「わか、んない…っん、う…っ」
 喋れる余裕があるなら大丈夫だと判断する。
 総士は中に埋めていく二本を緩やかに交互に動かしながら、一騎の中を探った。それは硬くなった筋肉を慣れ解す為と、そして、
「っ!」
 びくんっと一騎の体が震えた。それだけじゃない。一度は果てて萎えた筈の足の間のそれが、また確かな硬度を取り戻す。
「ここ、か?」
「や、やぁっ、そこ、あ、あ!」
 指先が触れたそれをぐいっと押すと、堪らず一騎が背を反らせた。それと同じくして、とろりと滾ったものの先端から半透明の雫が垂れる。
 『ここ』が総士の探していた、一騎の『いいところ』、だ。前立腺の裏側に位置するそこが、男にとっての中での性感帯になる。そしてそれは、慣れると前よりも随分と『いい』らしい。総士は味わったことがないが、ここを刺激してやると一騎は酷く乱れる。余程いいのだろうことは、その反応だけでよくわかった。
「そぅ、し、そぉしっ、おれ、も…っ」
「まだ駄目だ、一騎」
「ひ、んぅ…っ」
 案の定、そのまま上りつめてしまおうとする一騎を、総士は探る指を止めて引き止める。
「そ、しぃ…っん、んんぅっ」
 切なげな声で呼ぶ一騎にキスを落とし、総士は入ってきたよりも早く、そこから指を引き抜く。そしてそこがまだ喪失感に疼いている間に、
「ん―――っ」
「…う、くぅ…っ」
 既にぬかるんでいた先端を押し付け、脾肉を掻き分けて押し入った。
 ローションを塗し、指で慣らしたつもりでもやはり狭い。けれども初めての時よりは大分マシだと思えるのは、あの食い千切られるかと思った痛みをまだ覚えているからだ。あの時は前へも進めず、後ろへも後退できず、一騎が異物感を受け入れて力を抜いてくれるまでひたすらそのまま待った。
 けれどもあれから何度か体を重ねた。いつまでたってもこういう雰囲気を読みとれない一騎だが、流石に少しは学習していったらしい。入れたばかりはややきつくて、あまり動けないそこも、徐々に総士の形を受け入れていく。やがて深い呼吸に合わせて内壁が収縮するようになれば、またゆっくりと腰を進めていける。
 深い、一騎の奥へ。一騎本人すらも触れたことのない、総士しか触れられない身の奥へ。
「一騎…っ」
「ふぅ…そ、し…っ、はいって、ぁ、はいってくる…ぅ…っ」
「ああ…一騎の中に、僕が…お前と一つになっていく…」
「……っ…」
 切れ切れにそんなことを口にする一騎に、意思を強く持たなければ沸き上がる熱情のまま突き入れてしまいそうだった。しかしそこはどうにかなけなしの理性を保ち、総士はゆっくりと、確実に一騎の中を自分で埋めていく。
 やがてローションのずぶ、という水音と共に、総士の腰が一騎の尻に当たって止まった。
「…っ、ふ……入っ、たぞ」
「あ、ァ…」
 少しでも動くと感じ入ってしまうのか、一騎の呼吸は短く浅い。それでも総士を受け入れる粘膜はそんな一騎の意志に反し、ゆっくりと、捩るように総士のものを締め付けた。動きを止めていても緩やかに締め付けられる感覚は、じりじりと総士の理性を焦がしていく。それがまた入り込んだ総士を追い出そうとするのではなく、離すまいと引き止めるような動きに感じられれば尚更だ。
「……一騎っ」
「あっ、そ…ぉし…んぅ、んんっ」
 中へとより深く押し込むことを承知で上半身を倒し、ぴくりぴくりと震える一騎にキスをした。逃げる舌を掴まえて、溢れた唾液を啜る。そしてそのまま、総士は我慢していた抽挿を開始した。
「!? ん、あっ、ああ!」
 がくがくと揺さぶると、合わせていた唇が外れる。それを追い掛けたくても、連続して甘い嬌声を零すその口を塞ぐことの方が惜しかった。
「ひあ、そっ、こダメ、だめ…ぇっ」
「…っかず、き…!」
 先程指で弄った時に達しそうになった場所を見つけて擦ってやると、ぎゅううっと中を絞られる。一騎とは違い、総士はまだ一度も出していないからか。途端に腰が重くなるように感じて、早くも限界がちらつき始めた。
「…っ…一騎、すまない…先に、いいか?」
「んっ!」
 ぐっぐっと腰を押し付けると、一騎が息を詰める。すると尚更締め付けてしまい、粘膜でしっかりと総士の熱を感じ取ったのだろう。震えと共にか細い悲鳴のような声を上げ、しかし一騎は涙の滲む目で総士を見上げた。
「俺、も……なあ、一緒、に…!」
「ああ」
 総士の腹部にずっと擦り付けられていた一騎のそれも、弾けそうに限界だった。
「んっ、アア…!」
 総士は一騎の先端をぐしょぐしょに濡らす蜜を指に絡めて擦り付け、同時に腰を大きく引いた。そして抜け出て行く感覚に中がきつく締まろうと収縮するそこへ、素早く、また深い場所まで腰を押し込む。
 動きはたったそれだけだった。
「―――-っく、う…!」
「あ、あ! ……っ!」
 ぶる、と腰の根が震え、きつく締め付けられた先端から熱が溢れた。それに一瞬遅れて、重なった二人の間に一騎の放ったものが飛び散る。
 そのまましばらく総士は体を緊張させたまま動きを止めていたが、震えが収まるとゆっくりと力を抜き、そして同じくぐったりとして肩で息をしている一騎の体を抱き締め、体を折り重ねた。
「一騎」
「…ん…?」
 目を閉じたままでまだ何処か感じ入っているような一騎を呼ぶと、うっすらとその瞳が開いてこちらを見る。濡れた瞳に自分が映っているのが見え、総士はひっそりと笑った。
「大丈夫か?」
「…ん」
「気持ち良かったか?」
「………」
「何故黙る」
 もっとも、答えを聞くまでもない。
 いつまでたっても慣れない。けれども、そのいつまでたっても慣れないその反応もいい。乱れると、それすら忘れて夢中になってしまう彼の隠された本性も。
 引き結ばれた唇にちゅ、と音を立ててキスを落とすと、やや間を置いて、返すように首を伸ばしてキスをされた。
 その瞬間、
「…っ…」
「んぁっ……あ、あれ? そ、総士? また何か……」
「………悪いな」
「ええ?」
 一騎が異変を感じて声を上げる。そう言えばまだ自身は一騎の身の内だ。体を同じく力を抜いたそこでも、押し上げるもの気が付いたのだろう。
 これもいつものパターン。
 ここまで毎度のパターンで来ると、そうならざるを得ない自分自身にも呆れてしまう。しかし、この場合は一騎も悪いのだと総士は思うことにして、総士はゆっくりと沈めていた体を起こすのだった。


なんて頭の悪い…!会話ばっかですみません…でもエロ書いたの久々なんで…テーマは『総士から。そして一騎が鈍感生娘』でした。

[2011年 2月 16日]