「うー」
「それで、決めたのか?」
「うー」
「俺もそろそろ眠いんだけど…」
 ふあ、と大きな欠伸を漏らす一騎は寝巻姿だ。腕を組む総士もパジャマ姿である。そんな二人に挟まれる枕を抱きしめた操もまた、総士に借りたパジャマ姿だった。
 場所は真壁家2階、廊下。一騎の部屋と、間借りしている総士の部屋を隔てる廊下だ。その廊下の両側、それぞれの部屋に入る襖に一騎と総士が、その間に操がいるという位置関係。
 そんな状態で何をしているか、と言えば。
「うー」
「で、今夜はどっちの部屋で寝るのか決まったのか…?」
 と、いうことで。
「うー」
 操は唸りっぱなしだ。だったらいっそのこと毎晩交互に部屋を替えればいいと考えるが、総士がアルヴィスに詰めることがある日があるので、それも必ずとは言えない。またそれの他に『二人だけの別の用事』があって部屋にすら入れてもらえない時もある。
 なのでこの光景は、真壁家では割と頻度高く見られる光景だった。
 そして―――…。
「もう俺眠いし…来主、今夜は総士のとこで寝ろよ…」
「えー、ちょっと待ってよぅ一騎!」
「それじゃあ一騎の部屋で寝るんだな」
「ちょっと、総士もまだ待って!」
「………」
「………」
 それぞれ部屋にひっこもうとする二人の服を、操は両手で掴まえた。当たり前だが、その所為で抱えていた枕がぼすん、と足元に落ちる。

「う〜〜〜、もう、どっちかなんて選べないよぅ!」

「三人で一緒に寝る!」
「――-了解。いつもの通り、だな」
 結局いつもそうなる。
 はあ、と、ため息をついた総士は今にも寝オチしそうな一騎を先に自分の部屋へ戻らせ、そして自分の部屋へと布団を取りに戻るのだった。


拍手第二弾。初のほのぼの家族。ナチュラルに操が帰ってきて混じってて、そんな真壁家に総士同様お世話になってる設定です。

[2011年 3月 4日]