教室の自分の席から、窓の外を眺めるのが好きだ。
 遠く、どこまでも青い海を眺めるのが好きだ。遠く離れた世界までも覆い尽くす空の青さも好きだ。この小さな島から、世界のすべてを見渡せる気さえする。
 実際この島の外に、自分が思い描いた世界はなかったのだけれど……それを知ってからも、ここから眺める景色が好きだった。
「また外を見てるのか」
 剣司たちは先に行ったぞ、と後ろから聞き慣れた声。これからアルヴィスでファフナーの訓練がある。もちろん自分も行かなくてはいけないし、それは背後に立つ総士もそう。
 けれども一騎は振り返らず、わかってる、とだけ答えて、しかし腰を浮かせることはしない。総士もそんな一騎を急かすことはせず、ただ同じようにその後ろに立って窓の外を眺めた。
「いい天気だな」
「ああ」
「遠くまでよく見える」
「何も見えないけどな」
「空と海しかない」
「それだけでいいよ。他は…竜宮島があればいい」
 そうか、とだけ総士は相槌を打った。
 そう、この窓から眺める景色だけあればいい。その為に自分は戦っている。この海と空と竜宮島―――そこにあるもの、生きる人すべてを守る為に。
「行こう、一騎」
「ああ」
 促す為に肩に触れた熱を、一騎はその決意に刻み込んだ。


拍手第一弾。総一っぽくない、普通に総士と一騎だった…。

[2011年 2月 11日]